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フィットネストレンド

2024年、フィットネス業界が学んだ6つのこと

新規会員の来館率アップを実現する裏技から低負荷ワークアウトまで、2024年も様々なフィットネストレンドが業界を賑わせました。では、この1年の主だった学びをいくつか紹介しましょう。

ジョー・ブライス

新規会員の来館率を200%アップさせる裏技

しっかりとした戦略がなければ、新規会員の獲得に向けた懸命な努力は水の泡になってしまいます。今年、アイオワ州立大学とLes Mills Labが行ったリサーチによると、新しい会員がジムへと足を踏み入れる前に、フィットネスジャーニーにおける極めて重要なタッチポイントが存在していることが明らかになりました。もしそれが習慣化されれば……、結果は一変すると言うのです。

リサーチの結果、会員が「準備」と「誘導」を習慣づけると、エクササイズの継続率は200%もアップすることが明らかになったのです。では、準備と誘導を定義するものとは一体何でしょうか? 準備とは、新しい習慣を実行するために必要なものすべてを指し、通常、一貫性のある環境的または行動的なきっかけによって起こる事柄を意味します。例えば、毎晩夕食後にジム用ウェアの準備をする会員がいたとします。このケースでは、「夕食を済ませる」という行為が「ジム用ウェアを準備する」という習慣を誘発するきっかけになります。それによって「翌日エクササイズする」というプロセスがスタートするのです。

準備と誘導が組み合わさると、エクササイズの継続性はさらに高まります。新しい習慣を始めるには、このふたつを既存の行動と組み合わせることで、さらに効果をもたらします。ある会員にとって運動をする適したタイミングを特定させるために、週3〜5回ほど発生し、他のルーティンや行動に先行される機会があるかを考えてもらいます。例えば、お昼休みにエクササイズをする時間が取れるとします。そして、いつもランチ前に同じ場所にいるとします。その場所こそがエクササイズへの誘導的存在になり、人をエクササイズしようという気持ちにさせるのです。

会員にとって成功とはどのようなものかをきちんと語り合い、フィットネスライフを力強くスタートさせることは、彼らのモチベーションを理解し、継続的なロイヤリティを確保する鍵となるのです。


低負荷ワークアウトに対する高い需要

SNSからスタジオまで、2024年は低負荷ワークアウトの話題で持ちきりでした。「筋力トレーニング=厳しい」というイメージを和らげたいというニーズもあってか、目標達成に向けた比較的ソフトなオプションとして、多くのムーバーにとって低負荷ワークアウトは欠かせない存在になりました。さらに、低負荷トレーニングはマインドフルネスとしての効果も報告されています。他方ではヨガやバレエも人気を集めましたが、特出していたのはピラティスでした。有名人やインフルエンサーがピラティス人気に拍車をかけ、大きな需要を生み出したのは言うまでもありません。

ジョセフ・ピラティスが開発したオリジナルのワークアウトは、日常生活における悪い習慣の改善を目的としていました。そこで、悪い姿勢を改善することができ、マインドフルな呼吸法を取り入れたプログラムが考案されたのです。より多くの男性会員をスタジオへ呼び込むために、賢明なクラブ運営者であれば真っ先にピラティスの活用を思いつくでしょう。米国国立衛生統計センターのレポートによると、ケガからのリカバリーや古傷による痛みに対して、男性は女性よりも低負荷ワークアウトを好む傾向にあるとの結果が出ています(31.8%対27.5%)。


フィットネスのリアル体験

人とのつながりを大切にするZ世代は、コミュニティを育むことに意欲的です。そのため、他者とつながることができるリアルイベントの需要が高まっています。ムーバーに自己ベスト更新を促すような競技大会はもちろん、太陽と海、そして腹筋を融合させたビーチイベントなどもあり、自身のフィットネスライフを充実させるため、世の中のムーバーが体験型イベントを求めていることがわかります。ジムでもジム以外の場所でも、Z世代は他者とつながることのできるワークアウトを求めています。イギリスのクラブ運営会社、The Gym Groupが最近発表したレポートによると、Z世代の37%がジムを社交場として利用しており、42%が健康を維持しながら友達作りをしているとのことです。

今年の10月、adidasとのパートナーシップとの一環として、Les Millsはドイツ・ベルリンでLES MILLS LIVEを開催しました。まさにリアル体験の理想形であり、数千人のムーバーが参加しました。そこにはLes Millsadidasが目指すフィットの未来がありました。有名ナイトクラブを会場にし、VR技術を駆使した没入型ワークアウトや幻想的な照明、素晴らしい音響、adidasの限定商品販売など、リアルイベントならではのコンテンツであふれていました。イベント終了後、参加したZ世代の71%がブランドへの関心が高まったと回答したこともうなずけます。



インストラクターの成長にはメンターの存在が必要不可欠

グループフィットネスの成長を促し、インストラクターが担う役割への理解度を深めるため、2024年、Les Millsではインストラクターの未来に関する過去最大規模の調査を実施しました。レポート「Nurturing Next Gen: Blueprint for Instructor Recruitment(次世代の育成:インストラクター採用の青写真)」は、フィットネス業界への就職に対してオープンな世界中の若者2,500人を対象とし、貴重なインサイトの数々を紹介しています。

レポートを読み解いた結果、既存のファンを認定インストラクターに転身させるためにすべきことが明らかになりました。クラブがライセンス取得後の継続的なサポートを約束できれば、若者たちは安心してインストラクターになるためのトレーニングを始めることができるのです。また、インストラクタージャーニーを歩み始めることに対する障壁は何かと聞いたところ、「メンターがいないこと」が最も多い回答でした。その他には、「サポート体制が整っていないこと(17%)」や「トレーニングを受ける自信がないこと(17%)」などがありました。おそらく最も簡単な解決策は、クラブ所属の人気インストラクターにサポートしてもらうことです。新人インストラクターは経験者からのフィードバックや指導を受けることができ、サポートする側のインストラクター自身も自分の仕事が評価されていると感じられ、さらにスキルを高める機会にもなるので一石二鳥と言えます。

一度クラブに足を踏み入れれば、若者たちは長く在籍する傾向にあります。将来が有望なインストラクターの69%はキャリアの将来性を思い描いるため、キャリアアップのための確かな道筋を探しています。つまり、クラブを「成長できる場所」として認識してもらうことがプロモーションにつながるのです。

定員に対する成長目標

筋力トレーニングに対するニーズが高まる一方で、ジム運営者にとってはフロアの定員問題が浮き彫りになった1年でもありました。このような問題への対処法として、リテンションマーケティングの第一人者、ポール・ベッドフォード博士はこう提言します。2025年に向けて、最も定員の多いエリアを軸に成長戦略を練るべきであり、そこへマーケティング活動を集中させることが会員の満足度向上につながる。さらに、施設内の他エリアの活性化にもひと役買うだろうと述べています。

「クラブの規模に関わらず、集客を管理するうえで全ての運営者にとっての最重要事項は、グループフィットネスのスタジオやファンクショナルエリアなど、より多くの会員へ同時にサービスを提供できるエリアへ会員を誘導することです。これ以上筋力トレーニングマシンの稼働率を上げられないのであれば(収容可能人数を最大化するための努力はすべて行ったうえで)、まだ施設内でスペースに余裕があるエリアを主に使用する見込みのある会員にターゲットを絞った方がいいのです。こういった見込み会員のニーズを満たす方が比較的容易であり、彼らがより長くクラブに滞在し、生涯価値をもたらす可能性は非常に高いので、必然的にマーケティングに係る費用対効果率も上がるでしょう」とも語りました。

比較的新しい会員にとって、これは特に当てはまるインサイトと言えます。ウェイトリフティングに励む人であふれかえったエリアは、ワークアウト初心者や長く遠ざかっていた会員に威圧感を与えてしまうかもしれません。スクワットラックやオリンピックバーベルは、コミュニティや友情、モチベーションなど、つながりを促進する効果は薄いでしょう(あくまでスタジオと比べての話です)。だからこそ、会員の心配事を取り払うためのオンボーディングが大切なのです。


大人をやる気にさせる

若いムーバーにとってジムが魅力的な場所である一方、かつては運動をしていたけど今は……という人を再びジムへ呼び戻すことは、クラブの成長と健全なコミュニティにとって必要不可欠です。アメリカでは、成人の80%が推奨運動量を満たしておらず、イギリスでは男性の3人に1人(34%)、女性の5人に2人(42%)が健康のために十分な運動をしていないとされています。イギリスの社会的企業、Places Leisureのフィットネス部門責任者であるサラ・ロバーツ氏は、可能な限り幅広い層のニーズに応えるフィットネス環境を提供することの重要性を述べています。

「私たちのビジネスモデルの中心は『ファミリー』であり、健康的なコミュニティを育むことを非常に重視しています。私たちは、あらゆる人にフィットネスを提供したいと考えています。そのためには、プログラム、タイムテーブル、設備、これらすべてがあらゆる年齢層およびニーズに対応していなくてはいけません。施設にとって地域社会は見込み会員が集まる場所であり、一部の人たちがフィットネスに積極的な姿勢を示すことは素晴らしいことですが、私たちはより大きな割合を占めるその他大勢とつながることを望んでいます。施設に入ったことがない人たちは、おそらく室内で行われていることに対する固定観念を持っていることでしょう。そのため、新規会員の獲得には、歓迎ムードのコミュニティが必要なのです。それが、見込み会員が1歩踏み出すことをあと押しします。より広い市場に対応することは、フィットネス業界が次の段階へ進むために極めて重要であり、私たちはコミュニティの存在はなくてはならないものだと考えています」。

運動から遠ざかっている人をやる気にさせるには、排他的ではないマーケティング、包括的かつ的を得たオンボーディング、そして快適なフィットネスライフを続けてもらうための定期的なコミュニケーションが必要です。