フィットネスで次に流行るものは何なのか、クラブ経営者は常にその答えを探しています。IHRSAやFIBOなどの展示会で取り上げられているものが参考になるならば、今年は「バーチャル」の1年になりそうです。
バーチャルはここ数年で著しく成長し、デジタルサービスとしての可能性を見出した12,000クラブで現在展開されています。クラブのみならず参加者にもその流行は伝わっています。業界調査によると、クラブ会員の60%が、クラブがどれだけのグループフィットネスクラスを提供しているかが入会を決める時の判断材料になると答え、またバーチャルに参加したことのない75%の会員が参加を検討していることがわかっています。早い段階からバーチャルを導入しているクラブは、そのメリットを実感できているため、今後バーチャルが普及することを予想しています。
弊社クラブ(Brick Bodies 6店舗)では全店にバーチャルを導入しています。
「弊社クラブ(Brick Bodies 6店舗)では全店にバーチャルを導入しています。フィットネスの最先端です。自分のスケジュールに合わせてフィットネスを楽しみたいと思う人が多いのです。それを実現できるのがバーチャルなんです。」と、プラネット・フィットネス傘下のBrick Bodies会長のビクター・ブリックは説明します。
かつてニッチと思われていたバーチャルも、今となっては参加率をあげるためにはなくてはならない製品になっています。ニュージーランドのレズミルズニューマーケットの店舗を例に挙げると、クラブ訪問の70%がグループエクササイズに参加する中、23%がバーチャルクラスに参加していることがわかりました。
それではクラブはどのようにしてバーチャルを活用して参加率を伸ばしているのでしょうか?果たして本当にバーチャルに効果を見いだせているのでしょうか?これらについて何名かの世界のクラブ経営者にお伺いしてみました。
未来に定着するバーチャル
新しい製品として話題になっていますが、バーチャルが次のトレンドとなることをたくさんのクラブ経営者が考えるようになっています。
バーチャルという意味では、ジェーン・フォンダのワークアウトを吹き込んだカセットテープや1930年代から活躍したジャック・ラレーンの時代に遡ることができます
「バーチャルという意味では、ジェーン・フォンダのワークアウトを吹き込んだカセットテープや1930年代から活躍したジャック・ラレーンの時代に遡ることができます」とアメリカとカナダで8店舗運営しているミッドタウン・アクレティックス・クラブの社長、スティーブ・シュワルツは言います。
「何が違うのかというと、それは品質とバーチャルが受け入れられるようになったことです。今年が転換期になると思います。バジェットクラブから始まったものが、プレミアムクラブにも拡大し、のちにすべてのクラブで導入されるようになるでしょう」
バーチャルの導入が進む中、それぞれのクラブにとって適切なプログラムなのか経営者はしっかり見極める必要があると、Brick Bodiesフィットネスサービスのリン・ブリックは説明します。
「とてもいいコンセプトなのですが、会員にとって最適なのかを判断する必要があります。弊社クラブで実施したバーチャルクラスのいくつかはあまり人が入っていないことがありました。なので、見極めはとても大事です。」
スタジオの費用対効果を最大化
スタジオをいっぱいにするクラスこそ収益が高いと言われますが、グループエクササイズにおいてはまだ成長する機会があります。2017年のMintel社の調査によると、一般的なクラブのサイクルスタジオは1日のうち83%は未使用の状態で、これは1年で160,000米ドルの収益減に換算することができます。それでは、クラブはどのようにしてこの状況を打破しているのでしょうか?
ヘルスワークス・フィットネスのCEOマーク・ハリントンは次のように述べています。「弊クラブにとってグループフィットネスが占める割合は多く、また参加者を呼び込む大事なプログラムです。週に150クラス実施しているクラブでもアイドルタイムは何百時間とあるわけです。その時間を活用して、バーチャルを導入すればいつでもクラスに参加できるようになるのです。」
バーチャルを導入すればいつでもクラスに参加できるようになるのです
経営者にとってスタジオの空き時間は作りたくないものです。そんなときにバーチャルを活用すれば収益を上げることができます。
「クラブの総面積のうち、スタジオが占める割合は多いのに、週35時間しか使っていないとなると非効率です。そのためグループフィットネススタジオの効果はじっくり検証する必要があります。」とクランチ・フィットネスの代表取締役ジェフ・ダイヤーは加えます。
バーチャルフィットネスを活用して、スタジオ稼働率を高めることで、ライバルとの差別化を図ることができます
「バーチャルフィットネスを活用して、スタジオ稼働率を高めることで、ライバルとの差別化を図ることができます。それをするために一番よい選択がLes Millsのバーチャルプログラムなのです。」
高品質なスタジオに
バーチャルを実施するにあたり、経営者の多くがAV機器に投資することが肝心であると口を揃えています。技術革新が進むに連れて、コストも下がってきているので、LEDディスプレイなどはお求めやすくなっています。
バーチャルには、大きなLEDディスプレイやスクリーンなどの高品質な装置が必要です
「バーチャルには、大きなLEDディスプレイやスクリーンなどの高品質な装置が必要です。その上でバーチャルで一番大事なのは、音楽とインストラクターの融合です。」とBasic-FitのCEOレネ・ムースは言います。
バーチャルを展開する上で古いプロジェクターではクラブ会員は満足しないと、スティーブ・シュワルツは説明します。
「バーチャルを成功させるためには、没入感のある体験を提供することです。クラブ経営者として、よりよい音響システムやスクリーンにお金をかけます。そして、クラブの雰囲気つくりにも着手し、一体感を醸成します。」
品質の高いコンテンツ
ベストなAV機器が重要である一方で、コンテンツの重要性は忘れてはなりません。そのコンテンツこそが会員を惹きつけ続けるのかの鍵となります。
コンテンツの重要性は忘れてはなりません。そのコンテンツこそが会員を惹きつけ続けるのかの鍵となります
「コンテンツは紛れもなく一番大事な要素です。いいコンテンツであれば、必ず結果につながります。」と24 Hour FitnessのCEOフランク・ナポリタノは強調します。
「素晴らしいコンテンツでなければなりません。質の悪いコンテンツは、プログラムそのものを潰してしまいます。これはインストラクターにおいても同じですね。」
ビクター・ブリックも同様に、バーチャルクラスはライブクラスのコンテンツに近いクオリティでなければ会員にモチベーションを与えることができないと説明します。
「コンテンツこそ成功への鍵です。そしてそこで提供することができる「エクスペリエンス」です。常にモチベーションを高く、楽しくエクササイズに取り組みたいですよね。バーチャルプログラムはライブクラスで体感できる楽しさを別環境で創造することができる素晴らしいツールです。」
ライブクラスへの道
バーチャルがもたらす効果で面白いのはライブクラスに与える影響です。バーチャルは、ライブクラスとのカニバリを起こすと言う評論家もいますが、実は反対の現象が見られています。業界調査の結果、バーチャルを並行して実施した場合、ライブクラスの参加率が12%伸びていることがわかりました。
ライブクラスに参加しづらいと感じる方にとって、バーチャルは効果的なツールです
「ライブクラスに参加しづらいと感じる方にとって、バーチャルは効果的なツールです。周囲に圧倒されないバーチャルクラスの環境は、初心者にとってグループフィットネスの試すいい機会になります。」
また、バーチャルはインストラクターにとっても脅威と思われてしまっています。しかし、グッドライフ・フィットネスクラス(カナダで400クラブ経営)のCEOデビッド・パッチェル-エバンスは、この不安を拭うためにはコミュニケーションが重要といいます。
「バーチャルを初めて導入した時、インストラクターの代わりになるものだと思っていました。しかし、我々がしたかったのは、ライブクラスへの参加率をあげることで、たくさんの人がグループフィットネスに参加できる扉を開くことで、ライブクラスの参加率が伸びて、結果インストラクターはより多くの会員と接することができるようになったのです。」
オフピークの終焉
バーチャルの一番わかりやすい利点は、スタジオの空き時間を有効活用し、ピークの時間帯に抱える負担を軽減できるところです。
スティーブ・シュワルツにとって、品質を落とすことなく、より多くのクラスを提供できることは武器だと言います。「RPM™バーチャルを実施しているのですが、ライブクラスほどの集客はまだ見込めていないにしても、インストラクターを配置できない時間帯に60分のレッスンを提供することができるのはとても有効です。」
クラブにとってバーチャルは、クラブ会員の「エクスペリエンス」強化とグループフィットネスに参加したことのない人へのリーチを図る機会になります。
「弊社のクラブは24時間営業が主なので、今まではできなかった夜中の時間帯にもエクササイズを楽しむことができます。」
バーチャルは、ライブクラスの参加者数を伸ばすのに効果がありました
「バーチャルは、ライブクラスの参加者数を伸ばすのに効果がありました。今までリーチできなかった方にも響き、ピークタイムの混雑も軽減することができました。」