バーチャルフィットネスの台頭は、ライブクラスにとって深刻な脅威となるのでしょうか?
とんでもない。むしろ実際はその逆です。市場調査によると、バーチャルを導入したスポーツクラブではライブクラスの参加者数が平均12%増加していることが分かっており、実際にバーチャルがより多くの人をライブクラスに呼び込むきっかけとなっていることが読み取れます。バーチャルクラスは初心者にとって入りやすい環境であり、ここから多くの人が「卒業」してライブクラスに参加するのです。スポーツクラブにとってもレズミルズにとっても、頂点に君臨するのはやはりライブクラスです。音楽業界も同じで、いろいろな方法で音楽を聴くことができる今、ライブ音楽がかつてないほどの人気を博しています。スポーツクラブではこれからも素晴らしいインストラクターが牽引するライブクラスを提供していきます。そして、ミレニアル世代やZ世代が期待する「常にある」サービスを提供するために、バーチャルも選択肢の一つとして展開します。バーチャルは、グループエクササイズの参加を増やし、クラブ会員維持の改善にも役に立つと言えるでしょう。
ライブクラスとバーチャルのクオリティーの差はどれほど大きいのでしょうか?
ライブとバーチャルエクスペリエンスの差は、コンテンツのクオリティーが高まるにつれて縮まっていくでしょう。とはいえ現段階では業界内の多くのバーチャルクラスのクオリティーはまだまだ低いようです。バーチャルクラスにおいてエクスペリエンスが一番重要であり、クオリティーの高いワークアウトを会員に提供できて初めて、オフピーク時の有効活用、タイムテーブルの充実化、会員満足度の向上などといった運用上のメリットを引き出すことができます。今まさに次のバーチャル時代に入っていて、かつてなく高まった会員の期待に応えるためには、映画のようなクオリティーを持ったコンテンツは欠かせません。コンテンツの他にも、それを提供する高品質なスタジオも必要です。バーチャル体験をさらに向上させるためにはスクリーンの設置やスピーカー、機器、照明などへの投資を増やすことも重要になります。
スポーツクラブやインストラクターにとって、こうした進化はどのような意味を持つのでしょうか?
よりよいバーチャル体験が提供できるようになれば、ライブクラスのインストラクターはさらにレベルアップを図るようになるでしょう。クラブにとっては、スタジオの空き時間を最大限に活用することで、会員に質の高いエクスペリエンスを提供することができます。これは経営者にもインストラクターにも、会員にとってもメリットがあるのです。ライブかバーチャルかいずれかという認識を持つ人が多いようですが、実際には、成功しているクラブでは両立させているのです。バーチャルとライブをいかに連携させるかが特に興味深いところです。例えばインストラクターはスクリーンにバーチャルクラスを映し出しておいて、そのクラス参加者のフォームやテクニックをじっくり指導する時間を取ることもできるのです。
レズミルズのバーチャルフィットネスクラスの制作にはどのような影響を及ぼしていますか?
当社ではこれまで何十年もの間、フィルミングを通じてインストラクターのみなさんに、素晴らしいクラスを提供する方法を教育してきました。このフィルミング経験があるからこそ、消費者向けのコンテンツ制作は我々にとってそこまで難しい作業ではありませんでした。私たちは常にLES MILLS™ Virtualを進化させ、制作に磨きをかけています。そのため、限界を作らずに、色々な場所で撮影したり、カメラを増やしたりすることで、エクスペリエンスの向上を目指しています。フィルミングの際にはお客様を入れて撮影しているため、スクリーン上でインストラクターの動きを見るだけでなく、会場の音やクラスの一体感なども感じられるようになっています。
環境面以外で、バーチャルクラスがライブクラスと同じように効果的かつ安全だと言えるのはなぜでしょうか?
私たちは、バーチャルクラスとライブクラスのギャップを埋めることに非常に力を入れてきました。バーチャルクラス参加者が動きやその形をよりはっきり分かるように、新しいカメラを導入したり様々なイノベーションを駆使しています。また編集の際には、各トラックの前に時間を多く設け、必要に応じてイクイップメントを変更したり、環境を整える時間が取れるようにしています。さらに、参加者を惹きつけ、よりクラスに「つながり」を感じてもらうように、出演しているプレゼンターには工夫をしてもらっています。
バーチャルフィットネスが増えると、スポーツクラブはグループエクササイズの効果を測定する上で、よりデータを活用できるようになるでしょうか?
そうであることを願っています!グループエクササイズの参加率を分析することを強くお勧めします。多くのクラブはまだこれができていなく、そのためビジネスにとってグループエクササイズがどれだけ有効なのか測定するのがとても難しいのです。データ分析している世界のクラブでは、25〜50%の会員がグループエクササイズに参加しています。ニュージーランドのレズミルズ・ニューマーケットでは、来館者の70%がグループエクササイズに参加し、そのうちバーチャルクラス参加者が23%を占めています。グループエクササイズを行う会員はジムのみを利用する会員に比べて参加率が高く、退会率も26%ほど低くなっています。グループエクササイズから学べることは、努力しただけの成果が得られるということです。
キース・バーネットは、これまでにデビッドロイド・レジャー、リビングウェル・ヘルスアンドレジャー、ヒルトンワールドワイド、イージージムで上級職を経験するなど、世界のフィットネス業界における豊富な経歴の持ち主です。2012年にレズミルズに入社し、2017年4月からはグローバル・マーケットのCEOを務めています。誇り高きスコットランド人であり、熱烈なラグビーユニオンファンでもあるキースは、まだ幼い子どもや家族との時間を何よりも大切にしています。