フィットネス業界が急速に変化、拡張し続ける中、「成功」と「失敗」にはさらに大きな差が生まれてくるでしょう。競争の激化と変わりゆくトレンドに対応しながらも、鋭い洞察力こそライバルに打ち勝つために必要だと思われます。
これほどまでに消費者ニーズや要望を熟知する必要はありませんでした。しかし、パンデミックの影響で環境は目まぐるしく変化し、最新の情報にアンテナを張り続けることさえ難しいと感じる方も少なくないでしょう。
そこでLes Millsでは消費者ニーズを知るためのグローバル調査を実施し、それに最新の業界調査を組み合わせ”Les Millsグローバルフィットネスレポート”を作成しました。世界の12,157名を対象に、パンデミックによるフィットネス習慣の変化やクラブに求めるものなどについて伺いました。
2022年にクラブ会員の考え方を形成する7つの変化について調査から読み取りました。
1. 健康こそ財産
パンデミックにより健康を最優先する人が増え、調査対象の50%がウェルビーイング(幸福で肉体的、精神的、社会的すべてにおいて満たされた状態)にフォーカスするようになったとわかっています。すでに82%が定期的にエクササイズしていて(今後しようと思っている人含む)、そのうち75%がフィットネス施設などで主に行われる運動をしています。この結果から、フィットネスは世界最大のスポーツと言うことができるでしょう。
一方で日本に目を向けてみると、すでにエクササイズしている/したいと思っている割合は53%と少なかったのですが、定期的に運動している人のうち8割近くが週3回以上運動していることがわかっており、習慣さえ身につけば継続してエクササイズする人は多いと言えるでしょう。
このように健康意識が高まる消費者のニーズに合わせてサービス提供の幅を広げることは、クラブにとって成長の機会になります。
「多くの人にとって健康維持が優先され、その手助けをすることがクラブの役割だと思います。アウトドアやデジタルコンテンツを増やし、誰でも活用できるサービス展開することはキーになるでしょう。また、サービスプロバイダーの視点だけではなく、フィットネスを通じて得られる健康効果(例えば、がん発症率軽減、メンタルヘルスの改善、腰痛改善など)も訴求する必要があります。医療における薬の処方より、フィットネスを通じて“副作用”なく健康を手に入れられることは素晴らしいことです」とREX Roundtables CEOのエディ・トックは説明します。
2. ジムに通う新しい客層の争奪
パンデミックの影響でフィットネスを始めたという人も増えていて、定期的にエクササイズする人のうち27%が自らを「初心者」と分類します。それではこの初心者とはどんな属性なのでしょうか?そして彼らは何を求めてフィットネスを始めたのでしょうか?
その答えを見出せるクラブ経営者にとってはビジネスチャンスです。初心者の81%がグループフィットネスに興味があるものの、66%が1人でエクササイズしたいと回答していることから、クラブでの居場所/心地よさを感じるまでには時間がかかることを示唆しています。この点でインストラクターやスタッフの歓迎やモチベーションを保つためのサポートが重要になります。
アメリカで有名なクラブマネージャーと著者のハーブ・リップスマンは、初心者を増やしていくことが2022年最大のチャンスだといいます。
「パンデミックにより健康をより意識し、自ら健康維持のために努力する必要があると認識されるようになりました。その手助けをするのがクラブです。長年話題になっていることなので、今は今の情勢に合わせた新しいアプローチが必要になるでしょう。フィットネスに直接関連のない方法で来館を増やすなどクラブ経営者は工夫して取り組む必要があると思います」と同氏は言います。
3. クラブ会員は繋がりを求めている
長い期間続いた隔離とロックダウンによるリモートワークのため、交流を求めるクラブ会員が増えています。グローバルフィットネスレポートでは、クラブ会員の67%がグループワークアウトを好み、グループエクササイズが筋力やカーディオトレーニングを抜いて最も人気のあるエクササイズであることがわかりました。
パンデミックの最中失われた“コミュニティ“や“交流“の場を提供するのに適しているのがフィットネスクラブではないでしょうか。回復力の高かったクラブでは、まさにこの点において成功したと伺えます。
ロックダウン後に目覚ましい回復を遂げたBeau Sejour Leisure Centreゼネラルマネージャーのルーシー・スマートは、「ロックダウンで行動制限されて数ヶ月経ち、人々は“つながり”を求めています。孤独感やメンタルで苦しんだ経験を語る会員も多く、それだからこそクラブに戻ってこれることをとても嬉しく思い、仲間と再会し共に時間を過ごすことをとても楽しみにしているのです。会員がクラブに戻ってくるスピードと、こんなに多くの会員がいたのかととても驚きました。おかげさまでとても忙しい日々を送っています!」と状況を説明してくれました。
4. チーム(スタッフ)とのつながり
交流を求めている消費者が多いため、クラブスタッフが重要な役割を担うことになるのは避けられないことでしょう。
ライブクラスを選ぶ際に検討する要素のうち、人気インストラクターが最も多く、音楽(24%)とクラス種類(21%)よりも高い28%の人がそのように回答しています。日本ではクラスの雰囲気が最も高く36%でしたが、2番目にインストラクターと音楽が34%と僅差でした。このようにインストラクターの質は消費者ニーズに応えるため、そしてモチベーションを維持するためにもとても重要な要素ということができます。
新規会員獲得のためにも「人」はとても大事です。クラブ入会を検討している人のうち30%は雰囲気を重視し、そのうち59%はスタッフも重視していると言います。
「過去運営していたクラブでは、会員売上に最も寄与したのはグループエクササイズで、それは会員同士の交流にもいい影響を与えるものです。そればかりでなく、会員紹介(特にSNSからの)にも貢献しています。FacebookやInstagramでは、今さっき参加した爽快感あるクラスや最高のインストラクターについて投稿してくれますからね」とリップスマンは加えます。
5. 会員は自分のペースで運動したい
仲間と一緒にやるワークアウトを好むからといって、デジタルワークアウトが必要無くなったわけではありません。調査対象者の80%はパンデミック後にもデジタルワークアウトを利用したいと回答しています。日本では定期的にエクササイズしている人のうち21%しかデジタルワークアウトを活用していませんが、その中でも51%をミレニアルやZ世代が占めていることから、これからもっと普及し、新しい客層へのアピールになると言えます。
多くの会員(59%)にとってクラブと自宅で行うワークアウトの理想的な時間比率が6:4であると回答しており、それはクラブ内と自宅ワークアウトを融合した“オムニチャネルフィットネス”の提供を基本サービスとしていく必要性を示します。
経営者はこの流れに合わせて会員のクラブ体験を見直す必要があります。単に参加率を見るのではなく、会員とのあらゆる接点(自宅ワークアウト、アプリなどを含む)を精査し、どのように会員と繋がり、どのように強化していくべきなのかを見ていく必要があります。
「フィットネス施設などにとって一番大事なのは、会員にウェルネスソリューションを提供することです。だからこそ将来成功するフィットネス施設は必ずオムニチャネル戦略を取り入れるでしょう」と米国ニュージャージー州にあるThe Atlantic ClubのCOOケビン・マクヒューは説明します。
6. より良いデジタルコンテンツを求める
デジタルワークアウトが急速に知られるようになるにつれて、それで得られる経験も求められるようになりました。375,000以上のフィットネスアプリがひしめく中、消費者はクオリティの高いコンテンツを求め、その期待値にそぐわないものは受け入れません。
世界をリードするAppleやGoogleなどの大手の参入はさらにクラブを厳しい状況に追い込みますが、このような大手IT企業にできない“ライブ体験の活用”はクラブにとっての強みです。
「やらないわけにはいかないので、会員のためのトップクラスのデジタルコンテンツ提供を実現させることに邁進します。十数年前のテレビ業界におけるデジタル化と同じ状況がフィットネス業界にも押し寄せている感じがします」とデジタルコンテンツを活用してより多くの人にリーチすることを目標に掲げている米国フィラデルフィアYMCAののヘンリー・バスケスは取り組みについて語ります。
7. ライブワークアウトを忘れてはならない
改善を求めているのはデジタルコンテンツだけではありません。会員の58%は、好きなクラスの展開が無くなったら会員解約を検討すると調査でわかりました。(日本では38%)
参加者はまたこだわりが強く、86%が著名ブランドの展開するクラス、62%がクオリティ(音楽、インストラクター、イクイップメント、コリオ)がクラスを選ぶ際に検討する項目と回答しています。
バスケス氏は加えます。「最新で質の高いレズミルズプログラムは、タイムテーブルを充実させてくれます。子供からお年寄りまで来る当施設ですが、多くの人は結果を求めているため、そういう意味でもレズミルズは効果的です。」