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調査/研究

クラブの成長を牽引するバーチャル

デジタルサービスの拡張と会員維持のためにバーチャルを導入したオーストラリアのWillows Health & Lifestyle CentrenのCEOに、その得られた効果について聞きました。また、日本バーチャルを導入しているクラブ様に行ったアンケート結果も合わせてご紹介させていただきます。

野久尾 彩子

1970年代からクイーンズランドの地域住民に親しまれているWillows Health & Lifestyle Centreは、14年前にサイクル、ヨガ、ピラティスのためのスタジオ設置するなど、フルリノベーションを施しましたクラブです。通常のフィットネス設備やサービスに加えて、医療関連(理学療法士、栄養士、心理学者など)のサービスも展開する”総合ウェルネス施設”。コロナの影響で、約2,500名いた会員は現在2,000名ほどですが、徐々に回復してきています。

テクノロジーの必要性とバーチャル

DX(デジタルトランスフォーメーション)が必要とされる現在、テクノロジーを取り入れない選択肢はありません。同クラブで最近導入したバーチャルプログラムは、会員がそれぞれのスケジュールに合わせてワークアウトできる環境の提供を可能にしました。このようなテクノロジーの活用は、会員のクラブ体験を充実させるだけでなく、ライブクラスを行うインストラクター含むスタッフをサポートするためにも役立っています。ライブクラスの参加人数制限が敷かれている中で、バーチャルは会員維持、そしてまたライブクラスに参加したいとモチベーションを高めるために役立っているということができるでしょう。

同クラブでは1年前メインスタジオにバーチャル(その5ヶ月前にサイクルスタジオにはRPM™とSPRINT™のバーチャルプログラム)を導入したのですが、どちらも会員の興味を引くものでした。サイクルスタジオでは導入後5ヶ月で参加率が26%増えた実績があることから、長い目で見た時のメインスタジオにおけるバーチャル効果には期待しているといいます。

会員の反応

導入初期はキャンセル待ちが出るほどの人気だったのですが、タイムテーブルの空いている時間にもバーチャルが活用できるようセットアップしていたためキャンセル待ちも減ってきたといいます。出勤前に友達とバーチャルSPRINTをしたり、友達同士の交流の場として活用したり、それぞれが工夫して利用しています。バーチャルは、普段スタジオプログラムに参加しないグループフィットネス初心者をひきつけていることがわかったため、同クラブでは、ワークアウトルーティンにグループフィットネスを加えるメリットについて、会員との会話の中に盛り込むようインストラクターやスタッフに周知し、参加を増やすよう取り組んでいます。

バーチャルプログラムの一つの利点は、このようにグループフィットネス初心者の第一歩として活用することです。しかしながら日本で実施したアンケートで、バーチャルクラスは初心者が入りやすい傾向にあるか否か質問したところ、「はい」と回答したのが4割に比べ、5割が「どちらでもない」と回答していることから、初心者の参加を促進するために、クラブと共に会員向けのコミュニケーションや参加しやすい環境作りに取り組む必要があると感じています。

日本のバーチャル導入効果

バーチャル導入クラブは日本ではとても多く、それはコロナの影響でさらに需要が高まりました。緊急事態宣言により休業を余儀なくされ、営業再開してからも人数制限がある中ライブレッスンができないクラブでは代わりにバーチャルを展開。また会員も生活スタイルが変化するなかで、たとえば今まで終業後にクラブに行っていた人がお昼休憩の時間帯を利用したり、自分のスケジュールに合わせてフィットネスを取り入れるようになっています。ライブクラスはクオリティの高いインストラクターの存在は必要不可欠なので、ライブクラスの実施が難しい時間帯にはバーチャルを活用して、あらゆる会員のニーズに合わせタイムテーブルを充実させることができるのもバーチャルを導入した理由と回答するクラブも多かったです。

バーチャルを展開する上で最も重要なのは、バーチャルがライブクラスや他のサービスの代わりになるものではないということをしっかり伝えることです。そのために、たとえば大型スクリーンを設置したり、映画館のような空間を作るために舞台幕を使ったりといろいろな工夫をして、プレミアムな体験を演出し、差別化を図っているクラブもあります。

さらには、バーチャルが、ライブクラスを担当するインストラクターの仕事を奪う脅威にならないこともスタッフ間で説明、共有しておく必要があります。ライブクラスへの参加をためらうフィットネス初心者が、バーチャルに参加することで、今度はインストラクターが牽引するライブクラスに参加したいと思わせることが重要なのです。日本で実施したアンケートで回収したコメントの中には、「インストラクターから反発もあったが、急な代行でバーチャルが使えるなどの利点を身をもって感じられたことで理解が深まった」や「学んでいる映像と同じ映像なので、実施インストラクターが映像と自身で乖離が無いように常にいいクラスを構成できるよう意識が高くなった」などポジティブな影響を語るクラブが多いです。

バーチャルプログラムの差別化、そしてしっかりとしたコミュニケーション確立で、会員にとっても、インストラクターにとっても、そしてビジネス全体にとってもいい効果を及ぼすのです。