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1. 創造性を育む
エンゲージメント戦略において、所属インストラクターに一定の権限を与えることは非常に合理的なやり方と言えます。なぜなら、会員とその嗜好を最も理解しているのはインストラクターだからです。最新リリースのクラスから会員向けのチャレンジまで、コンテンツを企画する上で、施設の人気インストラクターとフォロワーのつながりを活用しない手はありません。まさにメリットしかないシンプルな手法です。アメリカで複数の施設を運営するBrick Bodies社のグループエクササイズディレクター、サラ・ケラー氏は、会員のフィットネス体験向上に欠かせないものとして、インストラクターの活躍を強調します。
「我々のインストラクターチームは、コミュニティ作りにとても長けています。例えば、バイクチームは定期的にランチ会を開き、お互いのアイデアを共有しています。多様な考え方を理解することで、会員によりよい体験を提供できるようになるのです。また、インストラクター自身が(所属施設から)サポートされていると実感することができれば、それは結果的に会員をサポートする原動力となります」とケラー氏。
さらにケラー氏は、インストラクターがスタジオ以外でも評価されていると実感できるように、継続的な専門能力開発の重要性を提唱します。「クラブ全体で何が起きているのか、会員はどんなことに関心を持っているか、インストラクターにはクラブ運営の様々な側面を知ってもらいたいのです。年度初めになると、我々はインストラクター全員に新年度の目標を尋ねます。耳を傾ける人がたくさんいることで、『自分はクラブにとって大切な存在なんだ』と実感してもらえるよう心がけています」と付け加えました。
2. どこでインストラクター候補を見つけるか
優れた才能を見つけるために、施設の外に目を向ける必要はありません。有望なインストラクター候補は、すぐそこにいるかもしれないからです。会員がスタジオに足を運ぶ理由は多岐にわたります。運動を通じて感じる喜び、素晴らしいワークアウト体験、コミュニティの一員であること……。それは同時に、インストラクターという職業に惹かれる理由でもあります。つまり、熱心なムーバーは未来のインストラクターに最も近い存在なのです。例えば、50人以上のインストラクターが在籍するアメリカの有名クラブ、HealthQuestでは、このアプローチが勝利の方程式となっています。
同施設のグループエクササイズディレクター、リンダ・ロメイン氏はこう説明します。「私たちの施設では、ひとつのチームとして、インストラクター同士が楽しみながらサポートし合う文化に重点を置いています。私たちのインストラクターのおよそ80%は、元々会員でした!」
「例えばあるプログラムに欠員が出た時など、ステージに立つのに必要な資質を持っていそうな人がクラスにいないか、チームに相談することもあります。もちろん、一定のテクニックとクラスを楽しんでいることが大前提ですが、スタジオに活気をもたらし、インストラクターとして輝きを放つためには、適切なマインドセットと個性も重要なのです」。
3. Z世代とパーソナルトレーナーをターゲットに
メジャースポーツのトップチームと同じように、常に優れたインストラクターをラインナップする秘訣は、継続的なレベルアップと人材確保のために安定したパイプラインを維持することにあります。未来のインストラクターを惹きつけるには、かつてとは異なるアプローチを求められるかもしれません。実体験やエピソードを交えながら、透明性をもって「インストラクターという職に就くことで得られるもの」や「1人前になるまでのステップ」を伝えることが若い人材の確保、特にパーソナルトレーナー(PT)からLes Millsインストラクターへの転身を促すためには重要です。これは、イギリスでクラブを運営するPlaces Leisure社のフィットネス部門責任者、サラ・ロバーツ氏の見解です。
「施設の所属パーソナルトレーナーにグループフィットネスの価値を教えることが重要です。これまでもスタジオレッスンに適任だと思ったPTと話したことはありますが、多くはパーソナルトレーニングに固執する傾向にあります。私自身、元PTとして、クラスを教えることの価値を伝えるようにしています。クラスを教えることは新たなフォロワー(クライアント)獲得につながりますし、会話を重ねていくうちに信頼関係が生まれ、結果としてPT業もより活性化するようになるのです」。
ロバーツ氏は続けます。「もちろん、インストラクターが高収入を得られるよう、私たちにはフィットネス業界を盛り上げるという使命があります。PTの例に戻りますが、成功することは本当に難しいのです。多くのクライアントを持たなければ、期待するような高い収入を得ることはできません。だからこそ、グループフィットネスならではの安定性を強調します。好きなことを仕事にする。それが短期的なダッシュではなく、長期的なマラソンとして捉えることができるのです」。
4. 優秀な人材の獲得には投資が必要
質の高いインストラクターの採用に関して、フィットネス業界で長く活躍する作家のハーブ・リップスマン氏は、「しっかり投資をすれば、それに見合った成果を得ることができる」と確信しているようです。多くの人が近年の経済状況に不安を感じている一方で、ハーブ氏は今こそライバルに差をつけるチャンスだと考えています。
「世界的に人手不足が取り沙汰される中で、人件費の高騰は避けられません。しかしながら、今こそクラブが人事戦略を刷新し、マーケットやセグメントで最高の人材を獲得する大きなチャンスだと考えています」とはハーブ氏。
さらに、「短期的に見ると費用が気になるかもしれませんが、何より人材が中心となるフィットネス業界では、優秀なスタッフやスターインストラクターの存在は競合他社を圧倒する要因となります。施設の内観などに比べ、人材は唯一無二であり、ライバルがたやすく真似できない強みとなります。最高の人材を確保することが本当に得策なのです。」
優秀な人材はクラブのパフォーマンスに大きな影響を与えてくれますが、同時に人件費が気になるところです。しかしながら、ハーブ氏が指摘するように、企業文化が優秀な人材を惹きつける魅力となることもあります。つまり、チームワークや互いをリスペクトし合う環境を作ることは、コストをかけずに今すぐできることなのです。
5. 戦略を変える
変化において確実なものなどありません。だからこそ、常にインストラクターに寄り添う必要があるのです。彼らが今までとは違う環境に向き合う時、不安ではなく、むしろ期待感を持って取り組めるようにサポートしてあげてください。現状を打破し、新たな機会を受け入れることは学びにつながります。それは、アメリカ・マサチューセッツ州のクラブ、Mount Fitnessにとっても同じでした。同施設のグループエクササイズマネージャー、カリン・コーミエ氏は、クラブの導入プログラムならびにタイムテーブルを劇的に変えるという大胆な戦略を発案し、インストラクターたちの賛同を得るとともに、関係各所に機会創出を理解してもらうために尽力しました。
コーミエ氏は言います。「チームは、これまでのやり方にも満足していました。変化を恐れたり、新しい取り組みに不安を抱いたり、それが人間の性というものです。私は、インストラクターたちが成功に必要なスキルを持っていると信じていましたし、同時にLes Millsの研修やサポートを受けることで能力が向上し、さらなる高みに到達することができました」。
斬新な戦略を実践することは簡単ではありません。しかしながら、今では実に来館者の80%がグループフィットネスのクラスに参加するようになり、結果として大きな成功を収めています。
「決して楽な道のりではありませんでしたし、当初はインストラクターの間でも抵抗がありました。しかし、クラブとしてより高いところを目指したいという私の情熱や、Les Millsプログラムの質の高さを感じたインストラクターたちは、すぐこのプロジェクトに賛同してくれました。インストラクター自身もとても楽しんでおり、それを会員も感じ取っています」と、コーミエ氏は付け加えました。
6. 新プログラムの導入
新プログラムの導入は新たな機会を生み出しますが、導入までのステップを円滑に進めるには、ワクワクするようなことだけでなく、細かな点にも注意を払う必要があります。ローンチやスタジオの準備を完璧にこなすことはもちろんですが、最初のクラスを実施する前にインストラクターと行う作業も重要です。The Edgeのフィットネスオペレーションディレクター、ジェニー・アウ氏は、新プログラムの導入に先立ち、インストラクターが能力を発揮するための枠組みを紹介しています。
「新しいプログラムを立ち上げる時の最重要事項は、インストラクターが能力を十分に発揮するためのサポートを提供することです。つまり、スタジオに最新鋭の機材を揃え、十分な練習とチームビルディングの時間を確保することです」とアウ氏。
「SNSの力を有効活用するためには、インストラクターの協力が不可欠です。タイムラインを組み、ローンチに向けてのカウントダウンキャンペーンを実施し、施設のスターインストラクターにサポートを依頼しましょう。間違いなくインストラクターはグループフィットネスの心臓であり、会員の行動に最も影響を与えることのできる存在です。インストラクターのテンションが上がれば、会員のテンションも同じように上がります!」と力説してくれました。
7. チームとともに危機を脱する
まだ記憶に新しいコロナ禍によるパンデミック。危機というものはしばしば予兆もなく現れ、人々の日常を奪い、不安を煽ります。同じように、常日頃からスタッフやインストラクターが直面している問題を認識しておかなければ、あとで取り返しのつかないことになってしまう危険性があるのです。だからこそ透明性を持って、スタッフやインストラクターが日々どのように感じているかを共有できる環境が鍵となります。
フィットネスのプロフェッショナル、キャリー・ケップル氏は、パンデミックや2011年のニュージーランド地震など、数々の危機を乗り越えてチームを率いてきました。あれほどの危機的状況において、スタッフのモチベーションを高め、支援を行うことは、新しい日常に戻るために不可欠な第一歩でした。
「再び会員を獲得するために、まず着手すべきは再びチームを活性化させることです。多くのクラブ運営者は、大きな挫折のあと、スタッフのことよりも『どうしたら会員を呼び戻せるか?』ばかりを考えてしまうのです。
私たちのクラブでは、まずみんなで集まり、インストラクターたちに話し合いをさせることから始めました。会員のフィットネス体験において、いかにインストラクターの存在が重要であるかを再認識させたのです。私が長年使ってきたリーダーシップとコミュニケーションのアプローチは、『DBFCA』と呼ばれるものです」とケップル氏。
D = Desire(欲求):様々な取り組みに関わりたいという気持ちにさせる
B = Belief(信念):自分の存在が解決策であることを示す
F = Focus(集中):的を絞った計画を立てる
C = Commitment(献身):責任感を植えつける
A = Action(行動):実行に移す
DBFCAは、何かをリセットしたあとの出発点として最適なアプローチです。そのため、コミュニケーションやエキサイティングなイベントなどを通じて、スタッフとメンバーのエンゲージメントを高めることに集中できます。しかし、計画は 『タイトだがルーズ」にしておくことが重要です。明確な目標を持ちながらも、チームが素晴らしいアイデアを思いつき、それを実行する意思があれば、臨機応変に対応することが必要なので。」とケップル氏は締めくくりました。
新しいプログラムにチャレンジ
モチベーションの高いインストラクターには、挑戦の機会を与えてあげましょう。長年取り組んでいるプログラムでさらなる高みを目指すことも重要ですが、新たなプログラムへのチャレンジはインストラクターにポジティブな影響を与えます。Les Millsでは、プログラムを指導するための基礎を学ぶ初期トレーニング、IMT(イニシャルモジュールトレーニング)の申し込みを随時受付中です。
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