1. ハイペースな成長
コロナ禍や不景気の影響による不安定な数年間を経て、2025年はクラブが立ち直り、成長を加速させる年になる可能性の高さを示唆する様々な兆候が報告されています。
最新の「HFA Global Report」によると、クラブおよびスタジオ運営者の 86.8% が今後12ヶ月での会員数増加を期待しており、その7割近くは5%以上の増加を予測しています。さらに、運営者の92.6%が収益の増加も見込んでおり、それは幅広い分野での回復を意味しています。HFA によると、フィットネス業界は年間約8.7%のペースで成長しており、2030年までに、世界のクラブ会員数は2 億3,000万人に達すると予想されています。
前述の成長に欠かせない原動力とされているのがZ世代とミレニアル世代です。「ABC Wellness Watch Report Fall 2024」によると、Z世代の73%、ミレニアル世代の72%が定期的にフィットネス施設を利用しており(X世代は54%、ベビーブーマー世代は42%)、ジムエリアでのワークアウト、パーソナルトレーニング、グループフィットネスが最も人気のあるカテゴリーとして挙げられています。
2. 負荷の分散
大幅な成長とコロナ禍以降の施設利用頻度上昇に伴い、クラブは混雑し始めています。そのため、運営者は来館者数を管理し、施設のキャパシティを最大限に活かす検討をする必要があります。
多くのクラブでは、ジムエリアから収容可能人数の多いスタジオなどへ会員を誘導することがその解決策になることも。そうすることで混雑を緩和しつつ、より多くの会員が同時にワークアウトできるのです。
「これまでの業界では、直近12週間でクラブを利用していない会員は、平均で全体の35%にもおよぶ状況でした。しかしコロナ禍以降、Fitness First Germany全体ではこの数字が8%にまで減少しており、その結果、当クラブは非常に混雑しています」と、LifeFit GroupのCEO、マーティン・サイボルト氏は述べています。
「会員の施設利用頻度が上がることで、おのずと定着率も向上します。そのため、より多くの方にスタジオを利用していただきたいと考えています。より多くの会員をクラスに受け入れ、同時にインストラクターと会員が積極的に交流を持てば、つながりの強いコミュニティが形成されます。会員同士の絆が深まり、クラブを退会する可能性は大幅に下がるのです。こうした理由から、スタジオは私たちの成長戦略の中心的存在となっています」。
3. ペレニアルの登場
近年、フィットネス業界はZ世代とミレニアル世代の話題で持ちきりでしたが、2025年、新たな層が主役になりつつあります。それがペレニアル(現代を生き、最新テクノロジーに順応し、世代を超えてつながる柔軟で普遍的な人々)です。マウロ・ギリェンの著書『The Perennials』で述べられているように、人々がより健康的に年を重ね、より健康寿命が延びるにつれ、従来の人口統計は不要なものになってきています。
Mckinsey & Companyのレポート「2024 Future of Wellness」によると、健康的に年を重ねることへの投資は飛躍的に増加しており、アメリカとイギリスでは消費者の70%が、中国では85%が前年に関連商品を購入したことが報告されています。Mckinsey & Companyは、2030年までに世界の6人にひとりが60歳以上になることを指摘し、若者は将来に向けて、高齢者は寿命および健康寿命を延ばすため、健康的に年を重ねることへの注目がより一層高まると予測しています。
健康寿命に対する注目度が追い風となり、2024年のACSM(アメリカスポーツ医学会)のFitness Trend Listでは中高年を対象としたプログラムが3位にランクインしました。ACSMの広報担当者であるクリスチャン・トンプソン氏は、同世代のフィットネスレベルは非常に多種多様であることから、画一的なアプローチの危険性を指摘しています。
グループトフィットネスにおいては、生物学的年齢と実年齢、双方の視点を取り入れることがニュープログラムの開発で重要になります。イノベーションの一例として、特定の年齢層をターゲットにすることなく、生涯にわたって健康を維持することを目的とした低強度の筋力トレーニング、LES MILLS THRIVE(レズミルズスライブ)が挙げられます。運動初心者や久しぶりに運動する方、ゆっくりと運動に向き合いたい方など、あらゆるフィットネスレベルの方に最適なプログラムです。
2025年、ますます多くのクラブ運営者やフィットネス関係者が「健康寿命」に重点を置くようになり、長くエネルギッシュな人生を送りたいと望む層をターゲットにする傾向が見られそうです。
4. 敵を味方に
毎年1月になると新しい会員がクラブに押し寄せるのと同じように、メディアは12 ~18ヶ月ごとに、未来のクラブに対する脅威の到来を報道します。コロナ禍によるデジタルフィットネスブームをはじめ、クラブを「過去のビジネスモデル」と評したPelotonのジョン・フォーリー氏による発言、次世代が飛びつく「運動の代わりになる薬」、消費者の購買意欲を圧迫する不景気など、常に新たな「ジムキラー」が出現しては悲観的な見出しがニュースを飾ります。
フィットネス業界にとって痩せる薬の類は敵であり、クラブ来舘者数の減少と業界の混乱を招いた原因として非難の対象となっています。一部高級志向の施設などでは、GLP-1といったメディカルダイエットの出現にすぐさま対応し、会員のフィットネスジャーニーに組み入れていると言われています。一方で、健康的な食生活と定期的な運動さえあれば、痩せる薬の類は必要ないと主張するクラブ運営者もいます。
しかしながら、今後も痩せる薬は存在し続けるでしょう。つまり、クラブは危機の中からチャンスを見出し、敵を味方に変える必要があります。GLP-1の服用によって、脂肪だけでなく大量の筋肉を失うという研究結果もありため、健康的な体重を維持するための筋力トレーニングが注目されています。
アメリカの高級フィットネスクラブ、Equinoxはこれをチャンスと捉え、「GLP-1プロトコル」を開始しました。GLP-1を服用している会員が筋肉を維持、強化できるように支援をする、ターゲットを絞った パーソナルトレーニング プログラムです。きっと他のクラブ運営者も追随するでしょう。
「社会の変化をチャンスと捉えるか、はたまた脅威と捉えるか、それはあなた次第です。常に物事を前向きに捉える姿勢がなければ、今の私たちはなかったでしょう」とは前述のマーティン・サイボルト氏。
さらに、「痩せる薬の登場は、回復目的と予防目的の双方で、より多くの人々をフィットネスに誘導するチャンスだと考えています。減量以外にも、運動には多くのメリットがあります。ですから、クラブは大胆に行動し、このチャンスをつかむべきです」と付け加えました。
5. 女性の健康が注目の的へ
女性の健康に関する議論は、かつてないほど活発なものになってきています。クラブ運営者は、リプロダクティブヘルスやホルモンバランス、更年期障害対策をサポートするために、女性に焦点を当てたサービスの提供に積極的です。
特に月経がワークアウトに与える影響は大きく、女性アスリートの3/4は周期による悪影響に悩んでいます(非アスリートに限ると、この数字はさらに高くなると考えられています)。さらに、女性の79%は月経が始まるとその日は運動を休むという調査結果も。
イギリスで女性アスリートのサポートを行う組織、The Well HQは業界変革を先導して行っており、またThe Gym Group は支援する立場を明確にしています。Les Millsで は、女性が自分の周期を確認し、適したワークアウトを行うために役立つ情報を無料提供しており、今後リサーチを続ける予定です。
向こう1年間、身体的および精神的な健康の実現に向けたアプローチで、特に女性をサポートするサービスが業界全体を賑わすことが予想されます。
6. サーキットトレーニングの再来
フィットネス業界の黎明期からF45やブティッククラブの台頭まで、多くの人々にワークアウトの魅力を知ってもらう上で、サーキットトレーニングはとても重要な役割を果たしてきました。2025年、この傾向は加速すると思われます。
ブティッククラブの継続的な人気と競技系イベントブームに後押しされ、筋力トレーニングと有酸素運動を組み合わせた、会員をワクワクさせるサーキットトレーニングに注目が集まっています。
「BODYPUMPが大ヒットする前は、サーキット系のクラスがタイムテーブルの大部分を占めていました(1クラスあたりの参加者は150人!)。ニュージーランドのクラブでLES MILLS CEREMONY(日本未導入)を開始して以来、かつてのトレンドが再び盛り上がっています」と、Les Millsのマネージングディレクター、フィリップ・ミルズは指摘します。
「現在、多くの大手クラブ運営者がこのエキサイティングなトレーニングをスタジオで最優先に実施していたり、クラブの勢いを拡大するためにジムエリアまで活用するケースが増えています」と付け加えました。
7. フェスのようなフィットネス体験
フィットネスとフェス文化の融合は人気が急上昇しており、2025年にはさらに進化を遂げると言われています。より多くの人々が包括的かつ健康的なライフスタイル求めている中で、フィットネスフェスは社交的なつながりとウェルビーイングの両方を一度に経験できる機会なのです。その魅力は従来のワークアウトを超越しており、フェスのような雰囲気の中でコミュニティを育み、人々とつながり、そして健康でいる喜びを享受できるのです。鳴り響く音楽と共にエネルギー レベルが高まり、社交的環境でフィットネスを楽しむことができるユニークかつダイナミックな体験、それがフィットネスフェスなのです。
今年、フェスにインスパイアされたフィットネスイベントが急増し、国際的なブランド主導のイベントや地元フィットネス施設のコラボイベントなど、健康的かつ楽しむことが好きな人々がコミュニティを築く、このようなイベントを目にする機会が増えるでしょう。