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フィットネストレンド

シリコンバレーの「猛追」に負けず、「勝利」を手にするために

技術系大手企業がフィットネスへの参入を伺っている今、クラブはデジタルサービスを拡大し、急速に変化する市場で会員の高まる期待に応える必要性に直面しています。この変化に対応し、勝ち残るためのヒントをご紹介します。

レズミルズ

アップルは革新的なフィットネスツールの発売に向け準備、フェイスブックはフィットネスのライブ配信を目論み、アマゾンは様々なフィットネスデバイスを発表し、フィットネスへの参入が加速しています。また、自宅トレーニングを普及させ、クラブに迫るペロトンは、今年の3月以来、業界でのシェアが360%急上昇しています。

これらシリコンバレーの大手企業が新規参入しフィットネス市場が拡大する一方、クラブ会員を彼らに奪われる危機でもあるといえます。

新型コロナウイルスの影響で苦しい時期に、クラブにとって歓迎できるニュースではありません。しかし、新型コロナウイルスにより、世界中のクラブ会員のデジタルフィットネスのニーズが高まった今こそが攻撃を仕掛ける絶好の時期なのです。

クラブ運営者にとって、かつてないほど競争が厳しくなりましたが、希望がないわけではありません。新たな挑戦は、ビジネスチャンスを生む可能性も秘めています。技術系大手企業のような経済力やブランド力はないかもしれませんが、クラブには今まで積み上げてきた、クラブ会員のコミュニティという強みがあります。クラブは、デジタルフィットネスを上手く取り込むことによってビジネスを成長させ、“フィットネスの新時代”でさらに繁栄することができるでしょう。

「デジタル・ダーウィニズム」の定着

デジタルワークアウトの成長は、ここ数年でみられたトレンドであり、新型コロナウイルスの影響でさらに加速したとみることができるでしょう。

コロナ前のによると、クラブ会員の85%が自宅エクササイズしていたことが示されています。世界のクラブ会員数が10年に亘って年々増加を続けてきた中、デジタルフィットネスプラットフォームの利用が、既存クラブ会員を犠牲にすることなく、フィットネス市場の拡大と新しい層へのリーチに役立っていたことを示唆しています。

「フィットネス事業者がテクノロジーを採用して活用するスピードが、将来の成功に重大な影響を与えるだろう」と、ClubIntelでは述べられています。「フィットネス体験が実店舗からデジタルへと移行するにつれ、事業者は時代に取り残されないよう、より積極的にこうしたプラットフォームを検討する必要があるでしょう。」

レポートでは、「デジタル・ダーウィニズム」(テクノロジーや社会が、企業が自然に適応できないほど早く進化している現代の時代精神を表す造語)がクラブに与える影響を調査し、このテクノロジーの変化に対応できないクラブは“絶滅の危機に瀕している”と警告しています。

調査結果は、デジタルと実店舗を上手くつなぎ、会員に総合的なフィットネス体験を提供できるクラブが、将来繁栄することを示唆しています。このコロナ禍において、クラブがどれだけ迅速に適応できるかが示されました。

変化の時

デジタル・ダーウィニズムの影響がある今、「革新を、さもなくば死を(Innovate or die)」というフレーズは、クラブが直面する今の厳しい現実を表す言葉となりました。

しかし、かつてウィンストン・チャーチルが言ったように、「せっかくの危機を無駄にしてはなりません(Never let a good crisis go to waste)」。今こそ、会員向けサービスを見直し、将来を見据えたビジネスを実現する絶好の機会です。では、クラブはなにから始めるべきでしょうか?

「ほとんどのクラブにとって、世界最高のブティックにおける体験に勝り、アップルやグーグルに匹敵するハイテク製品を生み出すことは非常に難しいでしょう。しかし、両方の長所を組み合わせた「つながる」フィットネス体験を提供することは、実現可能な目標です。」と、Les Mills のキース・バーネットは述べています。

「スーパーと同じように、消費者はどんなフィットネスニーズも満たすことのできる場所を求めています。クラブは、ライブクラスが提供するモチベーションと人との繋がり、そしてデジタルを駆使した自宅でできるワークアウトなど様々なサービスを提供する必要があります。アップルや成功しているブティックにも提供できないサービスを提供することで、クラブは会員の維持、そしてまた新規会員の獲得に繋げることができるでしょう。」

では、クラブはどのようにしてデジタル化を進めたらいいのでしょうか?

先駆者から学ぶ

ロックダウンに素早く適応したクラブが行ったのは、既存ツールを活用した会員向けデジタルサービスの強化です。

2020年5月のClubIntelレポートによると、世界のクラブの75%が、自社アプリをやパートナー提携して、グループフィットネスクラスのライブ配信またはオンデマンドサービスを提供していることがわかりました。 パートナー提携サービスの中でLES MILLS™ On Demand(LMOD)は、クラブの31%が活用され最も人気で、Les Millsライブ配信サービスとともに多く活用されていたようです。

ライブ配信とオンデマンドの組み合わせを活用して、デジタル化を進めたクラブのひとつは、米国のフォーサイス・カントリークラブです。当クラブは、現在、記録的なグループフィットネス参加数を報告しています。

「ここ数ヶ月でフィットネスは変化しました。私たちは変化を受け入れ、ロックダウンが解除されたあとも、過去を振り返りたい気持ちを抑えて突き進んでいきます」とフォーサイス・カントリークラブのフィットネスディレクター、レナーテ・ヴァン・スターデンは話します。

「会員はクラブに「つながる」体験を求めており、私たちはその期待に応えなくてはなりません。ライブクラスは依然最高のエクスペリエンスですが、ライブ配信やLes Mills On Demandなどを活用して、会員にデジタルサービスも含めた総合的なサービスを提供することでライブとオンラインのギャップを埋め、会員のニーズに応えることも同様に重要です。」

会員数を増やし、収益を上げる

ライブ配信とオンデマンドは、ロックダウン中の一時的なサービスではなく、今後のクラブにとって長期的に提供すべき重要なサービスになりつつあります。

フィットネス施設のデベロッパーであるAllianceLeisureの調査によると、ロックダウン中にクラブから提供されたワークアウトを行った消費者のうち96%、ロックダウン後にクラブが再開したら施設を利用したいと答えています。一方、アフターコロナのフィットネス環境に関するClubIntelのレポートでは、「Z世代とミレニアル世代の取り込みを目指すクラブは、オンラインフィットネスコンテンツを提供する必要がある」と結論付けています。Z世代とミレニアル世代は、ロックダウン中に最もデジタルサービスを利用した層であり、彼らがクラブに戻るには、デジタルサービスを継続して提供する必要があるとしています。

会員向けサービスを強化し、新しい収益源を確保するために急速な進歩を遂げたもう1つのクラブは、イギリスのEveryoneActiveです。 3月にロックダウンが開始されるとすぐに、LMODと他4つのフィットネスアプリを組み合わせた一時的なデジタルサービスを、イギリス国内の190施設の会員に提供しました。デジタルサービスを強化したことで、10,000人を超える会員が月額9.99ポンドを払って新しいサービスを楽しみました。その結果、ロックダウン中にビジネスを支える収益を生み出し、会員を維持することができました。

この成功を受け、Everyone Activeでは、会員への長期的なデジタルサービスの提供を決め、7月に新しいデジタルフィットネスプラットフォームのEveryone On Demand(LMOD、WithU、Flex by Fitness on Demand、そしてEXiの4つのオンラインコンテンツを組み合わせ、2,500を超えるトレーニングを会員に提供するツール)を立ち上げました。

すべての新規および既存会員に対して、Everyone On Demandを標準の会員サービスとして提供することにより、既存会員の維持と新規会員獲得に役立てています。また、クラブに来ることを心配する会員向けに、月額9.99ポンドでEveryone On Demandを提供しています。

このような単体のデジタルサービスは、クラブがオンラインで新しい消費者の目を惹き、信頼を築き、最終的にはクラブ会員にしていく有効な方法です。クラブ体験を自宅で提供することで、通常クラブに行かない人にもリーチでき、フィットネスを始めるきっかけを作ることができます。2020年5月の調査で分かったことは、クラブ会員ではないLMOD利用者のうち、53%が、クラブでレスミルズのライブクラスに参加してみたいと興味を示していることです。

ライブクラスに繋げる

デジタルサービスは、クラブが従来はリーチできなかった層にアピールする機会を生みます。インターネットを使っている人は誰でも、クラブが提供するデジタルツールのターゲットになりえるのです。しかし、クラブにとってデジタルサービスだけではなく、ライブクラスと併せて提供することが強みなのです。

新型コロナウイルスによって自宅で運動するための選択肢は広がりましたが、定期的な運動を促すためにはモチベーションが依然として重要な要素であり、それこそがクラブが重要な理由です。ライブクラスは会員のモチベーションを高めるエクスペリエンスで、それを裏付けするように、クラブ会員は非会員よりも平均して14倍多く運動していることが調査で示されています。

Journal of Sport、Exercise and Performance Psychology(2019年8月)に掲載されたレズミルズグループネス調査によると、グループエクササイズは、参加者の喜び、運動レベルと満足度を高めることが分かりました。さらに、調査では「グループ効果」がクラブ会員のワークアウト体験にプラスに影響し、また参加したいと思わせる力があることが示されました。

「この調査結果が示しているのは、ワークアウトに関しては、人は社会的動物であるということです」と、Les Millsの調査責任者であるブライス・ヘイスティングスは話します。 「グループ効果を最大化すると、弊社で創った造語「グループネス」を高めます。そして、「グループネス」が高いほど、参加者の喜び、満足感、運動レベルが高まります。」

要するに、ライブクラスのモチベーションとつながりによって、人々はより一生懸命運動し、より楽しく、より頻繁にクラブに通いたいと思うようになるのです。優秀なインストラクターは、参加者ひとりひとりとのつながりを築くことでクラスにおいて一体感を生み出し、グループ効果を最大化する上で重要な役割を果たします。

世界の多くの人々が何ヶ月もロックダウンを経験した中で、クラブにとっての課題は、デジタルと店舗をつなぐことです。デジタルの利点(イノベーション、利便性など)を活用しながら、ライブクラスが提供するモチベーションを融合させることで、今まで以上につながりを求めている人々のニーズに応えることができます。

これこそが、シリコンバレーの大手技術系企業に対抗し、クラブを長期的な成功に導く鍵となります。今や「健康」が誰にとっても最優先事項であり、人々がフィットネスへの投資意向を示していることが、複数の研究により示されています。デジタルトランスフォーメーションを成功させたクラブは、コロナ危機を乗り越え、大きな飛躍を遂げるでしょう。