1. クラブ会員獲得においてもっとも過小評価されていること
デザインは、新規会員獲得にもっとも重要な要素のひとつです。それは、見込み客の感情に訴え、入会の迷いを打ち消してくれます。そんなバカなと思われるかもしれませんが、スポーツクラブ入会を考えている方のクラブ見学を思い出してみてください。一般的な見学では、担当者が最新のイクイップメントを紹介したり、スタジオクラスは週何回実施されているなどについて説明をしてくれます。しかし入会を検討している人は、見学段階で重視するのは、そのクラブが居心地の良い場所であるかどうかを見定めているのです。そのため、クラス数などは必要情報ですが、感情的に訴えてくるものではないので、実はそこまで響いていないのです。それよりも「週に3〜4回くらい通って、居心地が良いと感じるだろうか?」という見極めが一番重要なのです。デザインを通じて見込み客の気持ちを掴むことは重要なのです。
クラブデザインは、見込み客の不安を取り除いたり、居心地良くしたりする効果があり、クラブ見学の中で重要な役割を果たします。クラブは、会員や見込み客との様々なタッチポイントにおいてデザインが及ぼす影響と、生み出す感情について考える必要があります。
もちろん会員になった後は、アメニティーや実施プログラムなどがより重要になってきますが、クラブデザインの影響でクラブに通う頻度が高まる可能性もあることは忘れてはなりません。気持ちよくシャワーが浴びられるか?音響設備は良いか?フローリングの感触は?これらすべてがクラブ体験を作り上げ、クラブへの満足度の指標になるのです。
2. 交流の場としてクラブをデザインし、収益アップ
今日の超競争市場では平米単価が高騰している中、多くのクラブが、クラブ内に「交流」できるデザインを取り入れていないことがわかりました。しかしこれこそが会費を設定する上で重要な要素の一つなのです。
クラブを、職場と家庭の間にある「第三の場所」と言うことがありますが、そのイメーを定着させるために何かアクションを起こしているでしょうか?それともそうなることを期待して待っているだけでしょうか?デジタルへの依存が社会における孤立や孤独を助長している今こそ、クラブが主導権を握り、クラブを「交流の場」としてデザインする方法について考える時が来ているのではないでしょうか。結束の強いブティックでは1クラス30ドルという価格設定が可能な一方で、一般的なスポーツクラブは月会費30ドル設定でも高いと嘆く人がいます。規模の大きいクラブはこの点を考慮すべきであり、交流するニーズに対してどう応えられるかを検討する良い機会となるでしょう。
3. 幅広い客層を楽しませる
どうすれば独自性の高いデザインを保ちつつ、幅広い客層を惹き付けることができるのか?と、よくクラブの方から相談されます。特にグループエクササイズスタジオにおいて課題が大きく、見た目だけではなく、規模感や雰囲気を変えたりすることも重要となるため、計画段階でしっかり練ることが「鍵」です。スタジオデザインを検討するにあたりクラブは、早朝のHIITクラス、ママさんたちが多く参加するマインド&ボディのクラス、シニア向けクラス、そしてまた活動量の多いトレーニングまで全てのクラスを実施できる空間作りをしなければなりません。
最近とあるホテルチェーンのスタジオデザインをしたのですが、柔軟性を最も重要視されていました。そこで、円形のカーテンレールを設置し、クラスに応じて空間を活用できるようにしました。音量を抑えた中で実施するヨガクラスの時はカーテンで仕切って、照明を調整して空間を演出し、大勢で参加できるクラスはカーテンを開けて自然光を取り入れられるようにしました。ちょっとした工夫で、1日中様々なクラスを実施することを可能にしたのです。
4. 誰もが犯すようなミスを避ける
大工の仕事では、「2回測ってから1回切る」と言います。スタジオデザインにおいても同じことが言え、計画段階で慎重に考えることが長い目で見ると必ず利益を生むのです。これは特に照明に関して言えることで、巧みに設置すれば、壁に投影する様々な色や効果の可能性を大きく広げることができます。その演出が利用者の感情に訴えることができるのです。
スタジオデザインにおける最大のミスは、倉庫スペースの確保です。通常ではスタジオ全体の大きさの10〜15%を倉庫スペースに割り当てる必要があります。多いと感じるかもしれませんが、見栄え良く、様々なシチュエーションに合わせて対応できるスタジオを維持するためには必要と言われます。ヨガクラスの最中に、たくさんのステップやバーが積まれたスタジオでのヨガクラスは決して気持ちいいものではありません。「雑多」は、素晴らしいデザインの邪魔になるのです。
5. クラブ会員が「クラブの顔に」
ソーシャルメディア、特にInstagramは、クラブデザインやフィットネス全般に脚光を浴びせる上で大きな役割を果たしてきました。エクササイズする素敵な環境を創ることができれば、会員は喜んで写真を撮り、SNSで共有して友人に自慢するでしょう。一目でどのクラブがわかり、「今ここに来ています。すごく楽しい!一緒にやりませんか?」と会員が発信したくなるような、インスタ映えする環境作りを心がけましょう。たちまち会員がクラブの宣伝に一役買ってくれるようになります。
6. 目立ちたければ群衆を避けよう
独自のアイディアを生み出したいので、競合クラブが何をしているのかはあまり見ないようにしています。時には、業界内の革新的なクラブ – 例えばロンドンの1Rebel – がどのような取り組みをされているのか調べることもあります。しかし、多くの場合は、他からアイディアを得ることが多いです。
将来のことを考えるならば、競合よりも先を見据えて思考を凝らす必要があります。そのために、高級ホテルに泊まってみたり、素敵なレストランで食事をしたり、旅行に出かけた時には博物館、ナイトクラブ、バーなどに足を運び、ヒントを探します。オリジナリティを求めるのであれば、業界外に目を向ける必要があります。これは是非クラブ経営者の皆様にお勧めしたいと思います。
7. 規模を拡大してスタジオを満員に
素晴らしいフィットネススタジオを作るには、十分なスペースを確保する必要があります。スタジオスペースが十分ではないクラブをよく目にします。グループフィットネススタジオにたくさんの人を収容できるのは良いことです。収益の観点から見ても賢明であり(以下のグラフを参照してください)、大きな話題にもなります。次に重要なのは照明やフローリングや音響設備で、どれだけの「シアター感」を生み出せるかです。しかし世界最高のスタジオでも、素晴らしいサウンドシステムや、スキルの高いインストラクター無しには、クラスが盛り上がることはないでしょう。実用面から見れば、イクイップメントもまた見過ごされがちでありながら重要な要素となっています。イクイップメントを保管しているスペースのサイズ感と取り出しやすさはとても大事です。スタジオの入退室の際に他の方の邪魔にならずにイクイップメントを片付けることができるので、私がデザインする際には、入り口近くに保管スペースを設置することが多いです。
8. 魅力たっぷりにして、「グランドスラム」を狙う
空間の見た目とそれがもたらす感覚の両方において、「魅力の発揮」を非常に大切にしています。映画スターのようなキラキラした生活という意味ではなく、内面の美しさが重要なのです。フィットネスには、幅広い年齢層の方の魅力を引き出す効果のあるとても素晴らしいプロダクトがあります。素晴らしいワークアウトは、体型はどうであれ、人々の気持ちを高め、達成感を与えてくれます。クラブではこのとても良い一面が十分評価されておらず、もっと称賛されるべきだと思っています。その方法はまだ考え中ですが、改装を検討しているクラブは、利用者の「魅力」を引き出すという点に着目してみるのもいいのではないかと思います。