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メンバー獲得と維持

4年間で施設数を79%も成長させる大胆な戦略

クラブの成長促進に向けた先駆的アプローチ、脅威を最大のチャンスに変えるプロセス、そして優れたチーム作りに欠かせない「Sunday Tea Index」。ドイツを中心に多くのフィットネスクラブを展開するLifeFit Group社のCEO、マーティン・シーボールド氏が語る戦略とは?

ジャック・フィリップス

まず、フィットネス業界での経歴を教えてください。

マーティン・シーボールドです。フィットネス業界には20年以上携わっています。これまでドイツやイギリス、ベネルクス、アジア、オーストラリアのFitness Firstで管理職のポジションを務めてきました。

そして2019年、LifeFit GroupのCEOに就任しました。弊社は、Fitness FirstをはじめBarry's BootcampやELBGYM、Club Pilates、YogaSixなど、ドイツで165の施設を運営しています。多様なブランドを展開することで、市場の様々なニーズに対応できるだけでなく、タイプの異なる各施設から得た知見をグループ全体の質向上に活かしています。現在、目覚ましい成長を遂げており、2028年までに250施設への拡大を目指しています。これは、2024年頭の140施設から79%の増加であり、2019年のLifeFit Group設立当初の55施設と比較すると4倍ほどに相当します。

フィットネス業界における今後数年間の成長見通しをどう評価していますか?

非常に好調であると思っています。なぜなら、フィットネス業界には成長の余地が十二分にあるからです。例えば、ドイツでのジム普及率はわずか 13% ですが、北欧やアメリカでは 20% を超えています。ドイツ市場で毎年 1% の成長が見られれば、それは70 万人の新規ユーザーが参入することを意味します。業界全体で見ると、コロナ禍前に比べて施設の稼働率は105% に達しており、Fitness Firstに限って言うと120% を超えています。このようにジムは近年稀に見る賑わいを見せており、あらゆるセグメントに対応する形での業務拡大が求められています。

若い世代を業界に引き込むという意味では、低価格帯施設が重要な役割を果たします。彼らが将来的により高い価格帯の施設へ移る可能性という意味でもプラスに働くでしょう。また、月額50ユーロ(約8,000円*)ほどの中程度の価格帯においても大きな成長を期待しています。多くのムーバーはインストラクターや施設スタッフとのつながりを望んでおり、完全無人型ジムを求めてはいません。しかしながら、料金面において有意な点で、そういった無人施設にも十分な需要はあります。
*1ユーロ=150円(2025年時点)

ドイツでは商業スペースの賃料が過去最高水準にあり、プレミアム系施設の新たな展開は難しい状況です。建設コストも高騰しており、固定費は大きくなるばかりです。例えば、2,500m²のプール付き施設を建設するには、数年前なら5~6百万ユーロ(7.5〜9億円)だったものが、現在では7~8百万ユーロ(10.5〜12億円)もかかります。大きな市場がある大都市圏を除き、プレミアムなジムを新設するのは非常に困難なのです。

ジム普及率に関して、最終的にはどこまで伸びるとお考えでしょうか?

究極を言うと、私は全人類がジムへ行くべきだと考えています。今後 の10 年間で、世界の市場は最低でも1.5%の成長が見込まれており、フィットネス業界については2 倍になるとの予測が出ています。ヨーロッパでは多くの市場でジム普及率が 10 ~ 15% という中、次の10年間でノルウェーが40%(現在23%) に達するかどうかはわかりません。しかし、アメリカのカリフォルニア州やテキサス州などの事例を見れば、そのような数字に近づくことは不可能ではないと考えられます。コロナ禍を経て、若年層の実に60% 以上がジムを利用していることからも、今後ジム普及率の上昇は確実視されています。

フィットネス業界は定期的に新たな脅威にさらされていますが、これまで何度も経験してきたように、大きなチャンスへとつながる可能性も秘めているのです。近年、フィットネス業界への潜在的脅威として、多くの関係者が減量薬の存在を挙げています。しかしながら、減量薬の服用によって、脂肪だけでなく同量の筋肉も失うという研究結果もあります。これまで以上に筋力トレーニングの需要が高まると予測する関係者も多く、減量薬という脅威はジムの成長を促すチャンスでもあるのです。

社会の変化は、脅威を生み出すこともあればチャンスを生み出すこともあります。LifeFit Groupの今があるのは、常に前向きな視点で物事を見てきたからです。私たちは、減量薬の普及がジムでの運動習慣を促進させるチャンスと捉えています。減量だけではなく、運動には数えきれないほど多くのメリットがあり、今こそクラブは積極的にプロモーションを行うべきタイミングなのです。

いつか運動がもたらす生理学的効果すべてを得られるような薬が登場するかもしれません。 それでも、私たちが提供するオールインワンのサービスには及ばないでしょう。 人々がジムを訪れるのは、コミュニティの一員となり、友人を作り、仲間と会うためでもあるからです。 そうした環境を整え、フィットネス体験の質を高めることが重要です。現在、私たちのNPSスコア(-100から+100の間で変動する顧客満足度を測定する指標)は40を大きく超えており、月によっては50という非常に高いスコアに達することもあります。 これは、会員が「またきたい!」と思えるようなサービスを提供するために重要な指標です。人々のジム離れを懸念する声もありますが、Amazonが業界を席巻しても本屋は存在します。アプリで自宅に食事を届けられる時代ですが、レストランは賑わっています。フィットネス業界も同じように発展していくでしょう。



あなたの組織において、最適なグループフィットネス事業の運営とはどういったものですか?

とあるクラブチェーンを買収した際、Fitness Firstの主要クラブと比べてグループフィットネスの質が劣っていることに気づきました。そこで、チームと「何が課題なのか?」を話し合ったところ、「選択と集中」「予算」、そして「管理体制」の3つが見えてきました。

まず「選択と集中」です。ジムエリアには多くの労力と投資が必要なため、グループフィットネスの優先度が下がってしまい、十分なリソースを割けずにいました。そこで、ジムエリアの責任者からエリアマネージャーに至るまで、あらゆるレベルでグループフィットネスへ注力することに尽力しました。

次に「予算」です。買収したクラブチェーンでは、多くの施設で週15ほどのクラスしか実施しておらず、いきなり30にまで増やすのは現実的ではありませんでした。グループフィットネスにはライセンスフィーや人件費への投資が必要なため、成長を見据えて段階的に予算を増やしていきました。

最後に「管理体制」です。グループフィットネス事業を拡大するには、オペレーションの精度が不可欠です。週30クラスを運営するには約15人のインストラクターが必要で、インストラクターの確保、教育、管理(シフト作成、代行の手配、クォリティの維持)が求められます。そのため、エリアごとに4〜6施設を統括するグループフィットネスリーダーを配置し、各施設には専任のコーディネーターを設けました。

「選択と集中」「予算」「管理体制」の強化により、グループフィットネスの質は大幅に向上しました。



戦略を持ってグループフィットネスに注力する上で、ビジネス面での原動力は何ですか?

これまでのフィットネス業界では、「会員の約35%が直近12週間で一度もジムに行っていない」というのが一般的な傾向でした。しかし、コロナ禍以降、ドイツのFitness Firstではこの数字が8%まで下がり、クラブは非常に活気に満ちています。頻繁にクラブを訪れることで会員の継続率が上昇し、現在は80%と良好な状態です。この水準を保つためにも、より多くの会員にスタジオを利用してもらいたいと考えており、クラスを増やすことで受け皿を拡大しているところです。同時にインストラクターと会員が交流を持ち、つながりが生まれることで強いコミュニティが形成されます。これにより会員同士の友情が深まり、退会率の低下につながります。だからこそ、私たちの成長戦略においてスタジオは重要な柱のひとつなのです。スタジオの投資は、会員の高い継続率を維持できた時のリターンに比べればわずかなものです。つまりグループフィットネスは、ビジネスの成長において優れた費用対効果をもたらすと言えるのです。

人との交流があるグループフィットネスは、会員の維持だけでなく新規獲得の大きな原動力にもなると考えています。既存の会員が友人を誘ってクラスやイベントに参加する可能性が高いからです。現在、新規会員の90%がデジタル経由(自宅やクラブ内でスマートフォンを使って)で入会しているため、専任の営業チームを設ける必要がなくなりました。その代わり、すべてのスタッフが入会手続きをサポートできる体制をとっています。中でもグループフィットネスに関わるスタッフは、誰とでもすぐに打ち解ける傾向にあるため、会員とのつながりを築く上で大きな役割を果たしています。そして何より、スタジオはクラブ内で最もモチベーションが高まる場所です。クラスに参加して素晴らしい体験をすれば、そのままジムへの入会を決める可能性が非常に高くなります。

プログラムに対するアプローチについて教えてください。

常に「最高のものを選ぶ」ことです。これはFitness First、Barry's Bootcamp、ELBGYM、Club Pilates といったブランドに限ったことではなく、施設の設備や働くスタッフ、提供する体験にも言えることです。この考え方はタイムテーブルにも反映されており、今後はLes Millsのクラスが全体の50%を占める予定です。Les Mills には 20 以上のプログラムがあり、各施設がその中から5〜7プログラムを選んで提供することによって、質の高いタイムテーブルを作ることができます。

今は優れたインストラクターの確保が難しい時代だからこそ、会員に提供するワークアウトの質が重要になります。この点においても、Les Millsは最高峰と断言できます。私たちは、「ロックスターインストラクター」の育成というコンセプトを非常に気に入っています。技術的に完璧であること以上に、共感を生み、人とつながることを好み、常に素晴らしい体験を提供できることを意味します。私たちのように大きな規模で施設運営する者にとっては、常に最高のクラスを提供するための仕組みが必要となります。1日に6~8本のクラスを実施する場合、週に50本以上のクラスという計算になります。では、どうすれば50回のクラスすべてを最高のクォリティで提供できるのか? それこそ私たちが追求すべき課題です。

他にどのような革新的取り組みを考えていますか?

施設のジムエリアにスタジオの要素を取り入れ、より多くの会員がグループフィットネスに参加しやすい環境と最高の雰囲気を作ることです。私たち自身もワクワクしています。そのため、まずはLES MILLS CEREMONY(日本未導入)の導入を検討しています。ステーション形式のファンクショナルグループトレーニングで、Les Millsならではの魅力が詰まったプログラムです。迫力ある音楽と進化系コリオグラフィーがフレッシュでワクワクするような体験を提供します。



中には、独自開発のグループフィットネスプログラムで他との差別化を図ろうとするクラブもあります。Fitness Firstでも検討したことはありますか?

業界内で、この話題は頻繁に耳にします。以前ニュージーランドのLes Millsオフィスを訪れた際、プログラムにかける投資やリソースの規模に驚かされました。世界トップレベルのクリエイターやミュージシャン、科学者たちがチームになり、最新のトレンドを追いながら長い時間をかけてプログラムを作り、12の施設で50回以上のテストを行っていることを知りました。それを目の当たりにして、「なぜ自分たちでプログラムを作る必要があるのか?」と強く感じたのです。私たちは、トレッドミルを作る会社でもなく、ジムの床材を開発する会社でもありません。同様に、スタジオプログラムを独自に開発しようとするのは合理的ではありません。競合との差別化を心配する前に、基本を正しく実行すべきです。もし競合が同じプログラムを提供していたとしても、まったく気になりません。多くのクラブは、同じような設備やジムエリアを備えています。最終的に違いを生み出すには、いかにして最高の体験を提供し、どのようにして素晴らしい人材を活かすかです。これこそ他のクラブが簡単に真似することのできない最大の差別化ポイントなのです。

新しいアプローチを実行する際、Fitness Firstではどのように人材の活用を最大化しているのでしょうか?

パーソナルトレーナー(PT)は素晴らしい例です。コロナ禍の影響で、クラブ所属のPTは1クラブあたり5人ほどから1〜2人にまで減少しました。現在では1クラブあたり3人にまで回復していますが、依然としてコロナ禍前の水準には至っていません。

私たちは、改めてクラブにおけるPT の存在意義を考えました。慣れない営業活動をさせたり、経験の浅いトレーナーに新規会員を担当させるのではなく、PT自身がクラスを担当することでジムエリアでの存在感を高めるよう推奨しています。グループフィットネスのクラスはコミュニティを構築し、自分が持っている専門知識を共有することができ、PT が自身のパーソナルレッスンの顧客を拡大するのにも役立ちます。

こういったアプローチでは、量より質を重視しています。平凡なトレーニング体験を提供するPTがたくさんいるより、少数のPTが素晴らしい価値を提供することに重きを置いています。質の高いトレーニングに注力することで、PTがさらなる活躍の場を見出し、会員はより多くのメリットを受けられる環境を築いています。



ライブクラスとデジタルの適切なバランスについて聞かせてください。

もし、ライブクラスとデジタルを完璧な形で共存させ、ともに高い利用率を達成しているクラブチェーンをご存知なら、ぜひ教えてください。私自身、まだその成功例を見たことがありません。優れたアプリやデジタルプラットフォームがあっても、10% の利用が成功とされるほど利用率が低いのです。

Fitness First では、実に会員の 92% がジムに通っています。このデータは、会員の関心事の上位にジム通いがあることを示しています。デジタル系のサービスは、補助的なツールとして大きな価値があります。例えば、私たちが導入しているEGYMアプリでは、クラスの予約やワークアウトの記録、オンデマンドセッションの利用が可能です。ただ、ライブクラスと比べると利用率はごくわずかです。

もちろん、デジタルにも活躍の場はあります。例えば、私たちはオフピークの時間帯にデジタルクラスを提供し、ジムエリアではファンクショナルトレーニングを行います。LES MILLS CEREMONY はその際たる例です。テクノロジーとライブコーチングを融合して、ユニークで魅力的な体験を生み出しています。結局のところ、デジタルはライブクラスを補助する重要な要素ではありますが、実際に体験できるトレーニングは何物にも変えられない価値があります。

優れたチーム作りの鍵は何でしょうか?

雇用において、私たちは「Sunday Tea Index(サンデーティーインデックス)」と呼ばれる基準を設けています。日曜日に自宅へ招き、一緒にお茶を飲みたいと思える人以外は雇わないという意味です。チームというものは、尊敬できる人や一緒に時間を過ごしたいと思える人で構成すべきです。

また、私たちはチームのメンバーを「飛行機」に例えています。まず、「プライベート」と「ビジネス」という両翼、胴体、そしてパイロットです。成功するには、これら4 つが最適なバランスを保っていなければなりません。「プライベート」が上手くいっていないとパフォーマンスに影響します。「ビジネス」の不調は生産性の低下につながります。「胴体」である健康に不安があると、最高の状態で物事に取り組むことはできません。そして、身体を操作する「パイロット」が集中力を欠いていると、飛行機は飛ぶことができないのです。

さらに、リーダーシップの存在を非常に重視しています。私たちの組織において、リーダーとしての役割を担う人は皆がフィットネスに取り組んでいます。日々トレーニングに励んだり、目標に向かって努力したり、アスリートとして競技に参加している人もいます。こういった姿勢により自制心や精神力、仲間意識が育まれ、それが優れたリーダーシップへとつながります。適切な人材を採用し、包括的にサポートし、手本を示すことで、素晴らしいチームを作ることができます。

フィットネス業界で成功するために受けた最高のアドバイスは何ですか?

「最も優秀な人になる必要はないが、最も優秀なチームを持つことは必要だ」と、かつて父はそう言いました。キャリアを通じて、私にとっての道しるべとなっています。

私は、常に才能ある人たちを身近なところに置き、彼らに成功するためのツールと機会を与えることに注力してきました。一緒に働いたことのある人の中には、組織を離れ、さらに大きな役割を担うようになった人もいます。そういった人々の成長の一端を担えたことを誇りに思います。

重要なのは、自分が主役になることではなく、チームが成功できる環境を作ることです。共通のビジョンのもとに素晴らしい才能を結集すれば、どんなことでも実現できます。