この1年間、私たちは大きなプレッシャーに直面し、クラブ会員はお互いに距離を取り合う習慣が身に付き、一方では、新しいデジタルフィットネスのライバルが次々と出現してきています。回復を妨げる障壁はたくさんあるとはいえ、コロナウイルスのワクチン接種が本格的に広まり、スポーツクラブの本格再開が間近となった今、トンネルの先に光が見えてきました。
パンデミックから学んだことがあるとすれば、プレッシャーのある状況で、クラブがいかに素早く会員のニーズに対応することができたかということです。クラブ経営者はコロナウイルスの流行に機敏に対応し、数週間のうちにデジタルワークアウトのサービスを導入し、会員がアクティブでいられるようサポートしました。ClubIntelの報告によると、現在世界中のスポーツクラブの72%がオンデマンドやライブ配信のワークアウトを会員向けに提供しており、2019年にはわずか25%だったことから比べると、短期間のうちにスポーツクラブが目覚ましい進歩を遂げたことを明白に示しています。
多くの意味で、パンデミックは経営者がいずれは手掛ける必要のあった変革の時期を早めました。今日のフィットネスユーザーは、シームレスなフィットネス体験を求めており、自分のライフスタイルに合ったワークアウトスタイルを求めています。また、クラブ会員の85%がコロナ前にも既に自宅でのワークアウトを行っていた(Qualtrix, 2019)という事実は、スポーツクラブが現代の会員のロイヤリティーを高めるためには、あらゆるタイプのフィットネス体験に対応することが重要だということを示しています。
AppleやAmazon、Facebookといった大手IT企業がフィットネスサービスに大きな投資を行なっている中、消費者のニーズも急速に変化しているため、競争力やユーザーとの関係を維持するためにはクラブも常に革新を続けていかねばなりません。レズミルズとしてデジタルサービス強化のために行ってきたことは、クラブの将来性を高め、シリコンバレーのライバルたちを圧倒するのには役立ちますが、今後数ヶ月のうちに、クラブ経営を早く元通りにするためには、ライブフィットネスの分野での優位性をさらに高める必要があります。
ライブの復活
コロナがきっかけで始まった自宅でのフィットネスブームが、フィットネス施設に終焉をもたらすだろうなどとメディアが書き立てる中、最も心強いのは、大半の会員がクラブのライブワークアウトに戻れる日を待ち切れないと思っているという事実です。
2020年10月のIHRSAレポートによると、クラブ会員の95%がクラブに通えなくなったことで不足感を持っており、さらに半数以上がロックダウン下のフィットネス習慣に不満に感じているということです。ロックダウンが解除された市場のうち、中国、日本、UAEなどのクラブでは、ここ数ヶ月で急速な回復があることが報告されています。
ニュージーランドにある弊社のレズミルズジムでは、2021年1月のグループ全体の参加者数が2020年1月の94%にまで回復するなど、人々が戻ってきています。
「好きなことを再び楽しめる状況にできたことで、そもそもなぜクラブに惚れ込んだのかということを思い出させることができました。」とLes Mills New Zealandフィットネスヘッド イシ・チェインは説明します。
「クラブ再開後に、スタジオのドアを開けた瞬間は多くの人にとって感動的な出来事だったと思います。そして、クラブ復帰を促したのは大きな理由は、インストラクターやパーソナルトレーナーとのつながりがあったからこそだと思います。馴染みのある顔ぶれ、そして感染予防対策について明確にコミュニケーションを行うことも、クラブに戻ってくるか否かの判断材料となっているのです。」
「業界団体や同業者との協力関係も極めて重要です。ニュージーランドエクササイズ協会は、ロックダウンの各レベルにおいてクラブやスタジオ、エクササイズ専門家がどのように営業すべきかについて、実に分かりやすいフィットネス業界用ガイドラインを作成しています。ビジネスの上ではライバルかもしれませんが、コロナ対策に関しては、お客様が安心してエクササイズできるよう、業界が一丸となって協力していく必要があります。」
社会にとって不可欠なもの
コロナ後の復興においてクラブが果たせる役割について強調しておくことは、会員を呼び戻すための鍵となるでしょう。昨年の明るい話題のひとつは、政府や社会全般が健康やフィットネスの大切さを再認識したことです。業界団体やHCMマガジンが、クラブやインストラクターと密接に協力しながらロビー活動を推し進めた結果、業界にとって好ましい政策やポジティブなニュースが次々と報じられました。ヨーロッパのいくつかの国では、フィットネス施設におけるコロナの感染率が非常に低いことや、フィットネスの人々の健康維持における役割を認め、クラブやレジャー施設がロックダウン規制の対象外となりました。
ukアクティブの最新のデータ(2月17日発表)によると、2020年のイギリスのクラブやレジャー施設利用者から出たコロナウイルスの陽性者は、利用回数10万回あたりわずか1.7人で、感染がクラブ内で起きたという証拠はありませんでした。クラブの安全性に関する情報を地道に発信し続けることは、懸念を和らげ、コロナ規制に関する政策に影響を与えるために重要ですが、ワクチン接種に与える影響についても強調していくべきでしょう。
いくつかの研究において運動がワクチンの有効性を高める可能性があることが示されています。バーミンガム大学の研究では、インフルエンザの予防接種の数時間前に腕の運動をした人がより強い免疫反応を示したことがわかり、またドイツのザールラント大学の研究では、インフルエンザ予防接種に対してアスリートはより顕著な免疫反応を示し、健康であればあるほどワクチンの効果は高まるということが明らかになりました。
社会的体験を強化
これまで何ヶ月もの間、世界中が「孤立」を感じてきた中、ロックダウン中に誰もが求めたコミュニティや人との交流を実現する理想的な場所となるのが、クラブです。すでに再開している国では、社会的体験を強化することが会員を呼び戻すための鍵となっています。
UAEで急成長しているチェーン店、GymNationの共同設立者兼マーケティングディレクターのアント・マートランド氏はこう述べています。「6月と7月に店舗を再開して以来、クラブ再開を待ち侘びた会員が殺到し、いまはコロナ前の参加率にほぼ戻っています。」
「グループフィットネスとクラブのコミュニティーの力は大きく、業界全体の回復のための重要な要素となると考えています。長いロックダウンと孤立から解放され、活気に満ちたライブクラスへの参加を待ち侘びて、会員はクラス内のポジション取りのために早くからスタジオ前に列を作っています。グループでワークアウトできることを切望しており、過去数ヶ月はこれまでの売上記録を更新することができました。」
デジタルを活用したクラブの成長
デジタルフィットネスの台頭がスポーツクラブの会員数に影響すると多くの人が予測しましたが、実際の数字を見るとそうではありません。デジタルフィットネス革命がここ数年で加速する中、クラブ会員数と普及率は増加を続けています。デジタルフィットネスの導入が早かったヨーロッパでは、2009年から2019年にかけてクラブ会員数が66%増加しています。
推計37万5千個ものフィットネスアプリが存在する現在、デジタルフィットネスを通じてたくさんの人がワークアウトをするようになっていると言われています。クラブ体験を自宅でも再現できることで、スポーツクラブにとっては普段クラブに訪れることのなかった多くの人々にリーチすることができ、フィットネスへの第一歩をお手伝いをするチャンスなのです。ライブ配信やオンデマンドなどの独立型デジタルサービスは、オンラインで新規ファンを獲得し、ブランド忠誠心を醸成し、クラブ会員になってもうための大事なツールなのです。
アライアンスレジャーによる2020年の調査によると、ロックダウン中にクラブの提供するワークアウトを試した消費者の96%が、ロックダウン後にその施設が再開したら利用したいと答えています。一方で、LES MILLS On Demandの利用者9千名を対象とした2020年11月の調査からは、非クラブ会員の63%がクラブでレズミルズのライブクラスを試すことに興味を持っているということも分かっています。
ライブ配信とオンデマンドの組み合わせで完全なデジタル変革を遂げたスポーツクラブといえばアメリカのフォーサイスカントリークラブでしょう。同クラブでは、現在記録的なグループフィットネス参加者数を報告しています。またイギリスでは、190施設を運営するEveryone Activeが会員サービスの拡充と収益源の開拓に急ピッチで取り組んでおり、新たなデジタル会員が1万人以上集まっています。
完全な繋がりのあるクラブ体験
目的は、できるだけ早く元通りの会員者数に戻すこと、そしてさらにそれを伸ばすことですが、運営手法についてはもう元に戻すことはできません。デジタルはいまやクラブが成功するために欠かせない重要な柱です。そしてこれをライブワークアウト体験と組み合わせれば、デジタルのみのフィットネス商品に対して優位に立つことができるのです。
AppleやGoogleといった企業による強力なデジタルフィットネス商品の出現は、クラブ事業者にとって大きな悩みですが、このようなチャレンジは必ず新しいチャンスをもたらしてくれます。クラブには大手IT企業のような資金力やブランド力はないかもしれませんが、IT企業にはない資産があります。それは、人と人とのきずなやライブ体験を中心とした熱心なコミュニティーです。
デジタル面でクラブにとって重要なのは、モチベーションを高め、楽しく、結果の期待できる、高品質なオンデマンドフィットネスコンテンツやライブ配信クラスを提供することです。YouTubeには無料の平均的なフィットネスコンテンツが溢れています。ですから、有料であっても何度でも視聴したくなるよう、クラブが提供するものは世界レベルである必要があります。
品質の高いデジタルサービスを会員に提供できるクラブは、会員維持においても成果を得られるでしょう。2020年11月のLES MILLS On Demandの調査では、クラブ経由でこのプラットフォームを利用している会員の92%が、このサービスを提供している施設について、大変満足している(70%)かある程度満足している(22%)と答えています。
ライブフィットネスへの回帰
デジタルサービスを活用して会員の関心を集め、ライブクラスに誘導することが、急速な回復への青写真です。どのクラブにも熱狂的なファンはいますが、全員がすぐに戻ってくるわけではありません。そのため、クラブ発信のコミュニケーションにおいては、クラブに戻ることによってどんな素晴らしい気分になるかを伝えることが重要です。
中国のように回復の早かった国では、Pure Fitnessなどの大手クラブが、会員の活動再開、解約した会員の復帰、さらには新規会員を呼び込むことを目的としたリバウンドプランを打ち出しました。会員の配偶者や家族をクラブ誘致するための紹介キャンペーンや、ジムの再開後4〜6週間以内に入会する人を対象とした早期割引も行われました。もちろん、それぞれの地域状況により適切なサービスは異なります。ニュージーランドのクラブでは、ワークアウト施設に数々な制限が敷かれていたため、どのようなプロモーションを行うべきか慎重でした。
多くのことが変わったとはいえ、いまも変わらないものもあります。それは、クラブ入会を促すために会員に声をかけ続けてきたスタッフ。彼らはクラブ再開後にも、会員に戻ってきてもらうよう声をかけ続けてくれます。そしてまた、クラブ再開においてもスタッフは大事な役割を担うのです。会員の皆様に再び安心して過ごしていただけるためには、スタッフの力なしではできません。
「インストラクターは、クラブの誰よりも会員の心を掴んでおり、これまで以上に必要とされています。彼らは、会員が再び喜んで過ごしてもらう環境を作るためにすぐにアクションを取る人たちです。すでにクラブ会員と強い繋がりを持っているでしょうが、知らない会員ともつながるようしっかり努力してもらうことも重要です。」IHRSAの会長代理でありイリノイのStyles Studios Fitnessのマーケティングディレクターのキャリー・ケップル氏はこう語ります。
ロックダウンは自宅でアクティブに過ごすための選択肢の幅を大きく広げましたが、クラブ会員は非会員に比べ平均で14倍もアクティブであることに変わりはありません。理由としては、多くは自宅でエクササイズするほどのスペース、お金、トレーニングイクイップメントがないということもありますが、もっとも説得力があるのは、クラブが提供するのはフィットネスだけでなく、モチベーションも提供しているということです。
定期的に運動をするためにはモチベーションが必要不可欠です。そして最大のモチベーションは、達成感とみんなとワークアウトすることで得られる「繋がり」です。だからこそ、クラブにとって一番の資産は「人」であり、グループフィットネス体験が早い回復への鍵となっているのです。
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