スケジュールを変更する際、注意すべき点は?
ナターシャ・ヴィンセント(以下、NV):私たちは、改修工事でジムが騒がしい中、タイムテーブルが本当にエキサイティングなものにするにはどうしたらいいのか考えました。グループフィットネスをエネルギッシュで生き生きとしたものにし、会員がクラブでの体験は素晴らしいと感じられるようにしたかったのです。
新しいタイムテーブルを作る際、できるだけ元のタイムテーブルを活かそうとしました。改修工事の影響で、すでに会員のスケジュールに支障が出ることを考えると、全く新しいスケジュールでさらに彼らのルーティーンを乱すことは避けたかったのです。そこで考えたのが、小規模な変更でした。
どのクラスを残すかは、どのように決めたのですか?
NV:人気のあるクラスには一切手をつけず、その前後にあるクラスの見直しを検討しました。クラス数だけでなく、週に行われる様々なプログラムにも目を向けました。例えば、毎日同じ時間帯にBODYPUMPがある場合、そのうちの1クラスを別のプログラムに変更してみました。18時以降にしか通えない会員も多いでしょうから、バラエティに富んだトレーニングを提供したいと思いました。スケジュールを縦に見るのではなく横に見て、たくさんの選択肢があるかどうかを確認しました。例えば、毎週18時に何を提供するのか、会員は様々なトレーニングで刺激を受けられるか、など。また、スタジオが2つあるので、2階でストレングスのクラスがあれば、1階ではカーディオのクラスがある、あるいはその逆も可能なように心がけました。
最終的には何クラス削りましたか?
NV:17クラスです。とても多いですが、数字を見ながら何が必要なのかを見極めて、難しい判断を下さなければなりませんでした。私たちは通常、週に326のライブクラスを提供していますが、これにバーチャルクラスを加えると、約370クラスになります。
クラスを減らさなければならないとはいえ、予算は減らしたくありませんでした。インストラクターに支払うお金は十分にあったので、できる限りクラスをチームティーチング制にし、両方のインストラクターに満額のフィーを支払いました。そうすることで、優秀なインストラクターの収入を減らすことなく、彼らを維持することができました。
また、他のクラスの時間を変更する場合、会員のスケジュールに支障が出ないよう、元の時間より15分以上の変更はしないようにしました。例えば、BODYATTACK™のクラスを10分早めて45分フォーマットにすることで、BODYJAM™のクラスを元のスケジュールから15分ずらす、と言ったまるでテトリスのようなことをしていました!
改修工事に伴う会員へのフォローアップはどのように行いましたか?
NV:マシーンフロアに来るだけの人はクラブへ訪れる回数が減り、おそらく他の店舗に行くことになると想定しました。それに対応するため、会員全員が近隣のLes Millsクラブに通えるようにしました。その店舗においてグループフィットネスへの参加者の増加も考えられるので、私たちのクラブが改修工事の間も、その店舗のタイムテーブルが会員の期待とエネルギーを維持できるようなものであってほしいと思っています!
新しいプログラムをタイムテーブルに追加する場合、その曜日や時間帯はどのように決めましたか?
NV:新しいクラスをタイムスケジュールに加える場合、まだクラスがない時間帯に入れるか、他のクラスと入れ替えるかのどちらかになります。その際は、クラスの出席率やプログラム全体の人気度を考慮して決定します。クラスを新しいプログラムに置き換える場合、インストラクターには必ずその新しいプログラムで認定をとる機会を与え、彼らの枠を確保するようにしています。
新しいプログラムを導入する際の課題のひとつは、既存のインストラクターに過度の負担をかけず、彼らを燃え尽きさせないようにすることです。ここでは新しいクラスを数多く試験的に導入しているため、タイムスケジュールへの反映を急ぐ必要があることが多いのです。https://www.lesmills.com/jp/gen-fit/strength-development/(ストレングス・ディベロップメント)などのプログラムを教えるためにパーソナルトレーナーを採用することもできますが、グループフィットネスの指導は、個人に対するそれとは異なるスキルセットでもあります。プログラムをうまく提供するために、適切な人材を登用することが重要です。
6つのスタジオと100人以上のインストラクターを管理する中で、一番の課題は何ですか?
NV:チームとコミュニケーションを取るための最適な手段を見つけることだと思います。3つのスタジオを担当していたときは簡単でした。3つのチャットグループがあり、代行などは個人の管理に任せていたので、すべてを把握するのはとても簡単でした。しかし、今では年齢も違えばプログラムも違う100人のインストラクターを管理していて、全員がFacebookなどのSNSをやっているわけではありません。メールが欲しい人もいれば、ショートメールが欲しい人もいるし、Facebookメッセンジャーしかチェックしない人もいますからね。誰もがアクセスでき、クラブに関する最新の情報を常に受け取ることができる方法を見つけることが重要です。そのために私たちは時間をかけ、3カ月が経つころ、プログラム毎にFacebookメッセンジャーのグループを設けるのが最適なコミュニケーション手段だと判断しました。
一番不安だったのは、このクラブで教えているベテランインストラクターたちが、私が担当することについてどう反応するかということでした。でも、みんな素晴らしい人たちばかりで、私を暖かく迎え入れてくれました。きっと、来てすぐいきなり大々的に物事を変えなかったことが功を奏したのだと思います。きちんと時間をかけて、目標や目指すところをオープンにしながらも、すべての決断を慎重に行うように心がけてきたつもりです。
大勢のインストラクターチームを管理する秘訣は何ですか?
NV:私にとっての最大の学びは、インストラクターからカウンセラーのように思われるような環境に陥らないよう注意することです。個人的な問題、つまりクラブ外で起きていることを相談されることもありますが、他人の感情をあまり受け止めすぎないように境界線を設定することも大切です。「クラブでのレッスンで何かお手伝いできることはありますか?」と気にかけつつも線引きに気をつけないと、チーム全員の感情を受け止めてしまうことになります。
実際、私はインストラクターの育成と採用を行っていますが、それに1週間のうち40時間全てを費やしているわけではありません。受付、フロア、会員のコンサルタント業務など、クラブ内のあらゆる部署と連携して動くことが私の大きな役割です。給料計算やタイムテーブルの作成、そして会員からのフィードバックに基づき、誰がクラスを受けるか、いつクラスを行うのか、といった難しい決断もしなければなりません。たくさんの意思決定とプランニングのため、チームと全く連絡を取らない週もあります。
タイムテーブルからクラスを外さなければならないとき、インストラクターとはどのように向き合いますか?
NV:グループ・フィットネスはエモーショナル(感情的)な業界です。インストラクターは自分のクラスにとても愛着を持つので、それが他人とつながる時間であり、称賛や評価を得る方法であったりします。それは彼らのアイデンティティの大きな部分を占めているのです。クラスから離れることは、感情的な愛着があるため決して簡単ではありません。たかがレッスンと思うかもしれませんが、そのインストラクターにとっては、1週間のうち1時間だけ自分のことを好きになれる時間なのかもしれません。なので、クラスを外すのはとても難しい決断だと感じます。
私はいつも相手の話を聞いて、背景を理解しようとします。そして、「どうすればインストラクターを助け、クラブのパフォーマンスも向上させることができるのか」ということに立ち返ります。ともすれば感情的になりかねないので、インストラクターには、あくまでもビジネス上の判断であり、彼らに対する個人攻撃ではないことを真摯に伝えることが大切です。