知識を持っていることは重要ですが、それをうまく利用することは一筋縄ではいきません。
例えば、スポーツクラブにとって最大の成長チャンスは、まだクラブ会員になっていない大多数の消費者である「80%の人々」を開拓することだということは周知の事実です。しかし、それをどうやって達成するのかという問題は、業界がいまだ真に解明できていない難問なのです。
しかし、グローバル フィットネス レポートによると、50%の人がこれまで以上にウェルビーイング(持続的な幸福)を重視するようになるなど、コロナによる影響で、消費者は改めて健康を優先するようになりました。また、Googleの最新データによると、検索が示すジム会員権のニーズは過去最高を更新し続けているため、コロナ規制が緩和されてクラブがフル稼働するようになれば、事業者にとって大きな成長の可能性があります。
これを達成するには、運動への障壁を取り除き、80%に当たる人々に到達する道を広げることが鍵となります。最新の調査研究がその答えを持っているかもしれません。著者は運動のモチベーションと生涯健康を保つための秘訣として「自動化」を挙げています。
レズミルズ・リサーチ・ラボの運動科学者たちは、アクティブな人とアクティブではない人を分ける大きな違いとして、自動化(歯磨きをするときや、「お願い」や「ありがとう」を言うときのように、運動を意識せずに頻繁に行う習慣にすること)の特性を明らかにしました。
彼らが行った調査によると、「運動は生活の中で自動化されているか」という質問に対し、アクティブな人の100%が「とてもそう思う」と回答したのに対し、アクティブではない人の92%が「そう思わない」と回答しました。さらに自動化を促す行動や条件について調べたところ、そうした行動は適切なアプローチやサポートがあればすべて身に付けることが可能であるということがわかりました。
パイロット試験では、定期的な運動(10年以上にわたり少なくとも週に150分以上)をしている人と、ほとんど運動をしない人を二つのグループに分けて調査を行いました。
この研究から、二つのグループの運動への取り組みやその効果に対する認識に大きな違いがあることが分かっただけでなく、より広い意味でのウェルビーイングにおいても著しい相違があることが分かりました。
「人生に満足しているか」(仕事、人間関係、生活の質、経済的な見通し、自尊心などの観点から)という質問に対しては、アクティブなグループの四分の三以上(77%)は「とてもそう思う」と回答していますが、アクティブではないグループでそう回答したのは23%にとどまりました。
一方で、アクティブではないグループでは62%が日常生活においてコントロールが欠如している(自分で制御できないことについてたびたび緊張やストレス、怒りあるいは動揺を感じている)と感じており、アクティブなグループでそう回答したのは38%にとどまりました。
コロラド大学の非常勤准教授で本研究の主任研究員であるジンジャー・ゴットシャル博士はこう言います。「多くの人は運動が体に良く、健康の基盤となることを理解していますが、それを実践に移して常にアクティブな生活を送っている人の数ははるかに少ないのです。
我々の調査により、“自動化”が長期的な運動継続の鍵であり、アクティブな人とアクティブではない人を分ける鍵でもあることがわかりました。
良いニュースとしては、本研究では定期的な運動を本格的な習慣として定着させることができる、実践的な段階を特定することができました。自分が楽しいと思える活動を重点的に行うこと、初期段階では強度のレベルを調整すること、運動に社会的要素を加えることなどは、いずれも習慣を身につける上でのすばらしい方法です。」
今回の研究結果により、アクティブなグループにとって、身体的・精神的効果や自尊心における効果が、アクティブではないグループに比べより大きなモチベーションとなるということがわかったのは驚くに値しませんが、最大の違いは社会的効果に対する認識でした。アクティブなグループの84%は運動がもたらす社会的な側面(娯楽や楽しみ、友人と会う手段としての運動)にモチベーションを見出しているのに対し、アクティブではないグループではこれが48%にとどまりました。
また、運動から常にポジティブな感覚(楽しさや活力、達成感など)を得ていると答えた人は、アクティブなグループで92%、アクティブではないグループでは23%にとどまりました。
達成を妨げるものと達成を助けるもの
アクティブなグループは運動の記録や目標設定をする傾向がありますが、もっとも顕著な違いとしては、アクティブグループは運動の健康効果に注目していること(アクティブグループ82% vsアクティブではないグループ45%)、運動の時間を決めていること(同77% vs 36%)、状況に関わらず必ず運動する方法を計画していること(同84% vs 38%)などでした。
アクティブグループの77%は運動にチャレンジを取り入れること(疲れていてもやり遂げる、筋肉痛、強度上げなど)を好む一方で、非アクティブグループはチャレンジが好きではないと回答しました。
非アクティブグループにとって、モチベーションや時間、施設の不足がいずれもアクティブグループよりも大きな障壁となるようですが、もっとも明白な差が出たのは社会的な支援の不足(非アクティブグループ51% vs アクティブグループ8%)、運動への関心の不足(同66% vs 15%)、気後れすること(同49% vs 8%)となりました。
レズミルズの調査責任者であり本研究の共著者であるブライス・ヘイスティングスは、こう付け加えます。「この調査が示しているのは、エクササイズのベテランとまったくの初心者では、身体活動とその効果の認識に著しい違いがあるということです。
もっと定期的に運動を始めたいと思っている人にとって、スポーツクラブは彼らの不安を和らげ、彼らがためらう原因となる初期の障壁を取り払う手段をたくさん持っています。
クラブのデジタルフィットネスというオプションを使って自宅でのワークアウトをサポートすることも、初心者の気後れする感情を和らげ、技術を向上させて、もっとも楽しめることを見つけるのに役立つでしょう。そうすればいきなりライブクラスに飛び込む必要がなく、様子を見ながらフィットネスを始めることができます。」
クラスで選択肢を提供する
ではインストラクターはどうすればよいでしょうか?無事スタジオに足を踏み入れることができたあとは、誰でもワークアウトがうまくいっていると感じられるよう、必ず様々なオプションを提供しましょう。例えば、LES MILLS CORE™では様々なレベルのエクササイズを提供し、BODYATTACK™ではインパクトを軽くした動きを紹介しましょう。
「新しいメンバーたちを、チャレンジや複雑さに関して自主性や自立性のあるワークアウトに導くことで、自分のレベルを見つけて成長し続けるために必要となる柔軟性を学ぶことができます。」とヘイスティングスは付け加えます。「また、友人とトレーニングを行うなど、社会的な要素をセッションに加えることも、習慣付けにはうってつけの方法と言えます。」