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    調査/研究

    「Withコロナ」時代:クラブ会員の考え方の変化

    フィットネスが過去最大の危機から乗り越えようとしている今、新型コロナウイルス感染症が発生し始めた頃と変わらず多くの課題に直面しています。

    レズミルズ

    新型コロナウイルス感染症対策による緊急事態から抜け出すとき、クラブはどういった課題に直面するでしょうか。また、業界が完全に回復するまでにはどのくらいの時間がかかるのでしょうか?V字回復でしょうか?それとも第二波の影響を受け、U字、あるいはW字といった、より長期的な回復への道のりとなるのでしょうか。

    これらはフィットネス業界が現在直面している問題であり、多くの専門家がその答えを探すのに懸命になっています。この記事では、アジアとニュージーランドで営業再開しているクラブがあることを受け、ClubIntel、ukactive、およびLeisure-netなどの新しい業界レポートの結果を検証し、クラブが回復戦略を立てるのに役立つ重要な知見をピックアップしていきたいと思います。

    これらの業界レポートは、コロナ危機を乗り越えて新たな現実を迎えるにあたり、クラブがどのようにして生き残り、成功するかについての貴重な指針を提供しています。レポートから得た一番の学びは、将来のビジネスプランを立てるために既存のクラブデータを分析し、直面するであろう課題を一つ一つ乗り越えていくことです。

    ClubIntelの最新レポート『What Members Say Matters(クラブ会員の意見は重要)』では、共同創設者であるStephen Tharrett氏とMark Williamson氏が「過去の行動や経験は、会員復帰の成功に大きな影響を与えます。」と述べています。

    「クラブ再開の結果検証のためには、利用状況、会員期間、性別、年齢、などの指標すべてが重要です。これらデータの理解があることで、会員状況の予測を立てながら、退会者を再入会させるための最善の戦略を立てることができます。

    クラブ経営者が直面する課題の多くの答えは、データの中に見つけることができるのです。それでは、最新の業界レポートから「withコロナ」時代にクラブが直面するであろう課題とそれを克服するための戦略策定に活用できる8つの重要なポイントについてご紹介します。

    1. クラブ再開後の会員復帰意欲は高い

    新型コロナウイルス感染症をきっかけに起こったホームフィットネスブームは、フィットネス施設にとって向かい風になるとメディアで多く報じられていますが、実際には大多数のクラブ会員が、またクラブに通えることを心待ちにしているということです。

    全米2,000人のクラブ会員を調査したClubIntelのレポートによると、大多数のクラブは、コロナ後のクラブ会員数が65%~84%に落ち着くと予想しており、うち再開後数ヶ月は75%~80%くらいであろうと考えられています。

    この数値は、米国にて営業再開し始めているクラブのデータとおおよそ同じ傾向にあります。5月1日にクラブを再開しはじめたPlanet Fitnessは、6月2日時点で2,000以上ある店舗のうち800を再開しており、クラブ利用率は前年同期比で約60%となっています。ニュージーランドのレスミルズクラブでは、再開初週の来館数がコロナ前の64%まで達しました。

    一方、ukactiveと4globalの『The COVID-19 Impact Report(新型コロナウイルスの影響レポート)』によると、イギリスではクラブ会員の10人に9人がクラブやレジャー施設通いを再開する意向を示しています。何百万もの来館データと複数の消費者調査および市場調査を並べて検証した結果、88%のクラブ会員が、再開後、それまでと同じかそれ以上に施設を利用する意欲を持っていることがレポートによってわかりました。

    2. 来館数に期待

    マスクの着用や透明ビニールシートの設置で、クラブの見た目こそ大きく変わりますが、クラブビジネスを成功させるために、クラブ会員の来館データが重要であることは変わりません。

    ClubIntelのレポートでは、コロナ前の来館データが、再開後の来館予測を立てる上で非常に重要な指標になると結論づけています。月に平均12回以上来館していたクラブ会員の52%が「再訪する可能性が高い」と回答したのに対し、来館数が月8~12回の会員は37%、月1回以下の会員は22%にとどまりました。

    興味深いことに、来館頻度は、「またクラブに通いたい」という気持ちに影響があるものの、「通いたくない」という気持ちにはあまり影響がないようです。施設利用が月8回以下のクラブ会員の半数が「また通いたい」と思っているが、月4回以下の頻度になると「わからない」と答える人が多いのです。

    レズミルズのエグゼクティブディレクター、フィリップ・ミルズは、この調査結果について次のようにコメントしています。「より深く読み取ると、来館頻度は、クラブ会員維持と会員満足度と密接に関わっていることがわかります。フィットネスは、「モチベーション」ビジネスです。様々なエクササイズの選択肢を提供し、インスピレーションを与える方法を常に模索する必要があります。

    3. 健康は新しい豊かさ

    世界的な不況が迫っているにもかかわらず、大多数のクラブ会員はフィットネスへの支出を増やすか維持すると考えていることが、Leisure-netの『Post Lockdown Recovery Report(ロックダウン後の回復レポート)』で明らかになりました。(イギリスの45クラブの65,152名のクラブ会員が回答)

    Leisure-netの調査によると、消費者の90%が、ロックダウン解除後にはロックダウン前と同額以上のお金を使って体を動かしたいと回答しました。今や健康は誰にとっても最優先事項となっているため、新型コロナウイルス感染症の大流行を乗り越えられれば大きな成長の機会があるでしょう。

    また、研究チームによる動向調査によると、イギリスでは82.3%の人がロックダウン後に運動することに以前と同額の支出、7.5%の人がそれ以上の支出する意欲があると示されています。支出を減らすつもりだと答えた人は10.2%に過ぎませんでした。

    これらの結果は、ロックダウン解除後にニールセンが中国で実施した調査において示された、国民の75%が今後より多くのスポーツとフィットネスにお金を費やすことを計画していて、80%がより健康的な食事をしようとしているという結果と一致しています。これは春節時の支出に反映されており、家庭用フィットネス機器の売り上げは300%増となっており、いくつかのクラブでは例年以上の新規入会者数を報告しています。

    4. クラブ会員とアクティビティの再開は徐々に

    データによると、クラブ再開後のクラブ会員の戻りは急激に起こるものではなく、徐々に戻ってくる傾向であると言われています。

    ClubIntelの調査では、米国のクラブ会員の34%が、再開後1週間以内にクラブに通いたいと思っていることが明らかになりました。また、34%の会員が1週間から4週間の間に戻ると答え、25%のクラブ会員が1ヶ月から3ヶ月待ってから通い始めたいと答えました。これらの数値を元に、再開後の初週にクラブ会員の20~25%、4週目までにさらに20~25%の会員が戻り、3ヶ月目までに60~80%の会員が戻ってくると推測しています。

    加えて、ukactive と 4global の 『The COVID-19 Impact Report(新型コロナウイルスの影響レポート)』では、クラブ再開のスピードはどのような活動タイプ(スタジオ、マシンなど)によって異なると予測しています。 レポートでは、総合型クラブが再開してからフル活動できるまでには9ヶ月かかるとみています(最初の2ヶ月間は50%の規模で営業すると仮定)。その中でも、グループフィットネスの回復は早いと見ています。

    2020年7月4日に再開する施設の例にデータ検証した結果、2020年11月12日までにその施設のグループフィットネスが2019年の数字を上回る(+2%)と予測しています。また、フロア利用は2021年3月5日までに2019年の数値を上回り(+1%)、水泳は2021年4月19日までに2019年の数値と同程度になると予測されています。

    5. 「ソーシャルフィットネス」がクラブ再開を牽引

    「ソーシャルディスタンス」の確保が重要視されている中でも、クラブ再開の一番のカギは、仲間とともに行う「ソーシャルフィットネス」であると調査で分かりました。

    『The COVID-19 Impact Report(新型コロナウイルスの影響レポート)』では、クラブ再開後3ヶ月と6ヶ月後まで定員の50%で運営するという2つのシナリオを想定しました。そのいずれのシナリオにおいても、グループエクササイズは最も早く元に戻ることが示されたのです。次いではマシンジム、そして水泳が以前の状態に戻るまでに時間がかかるという結果でした。クラブ会員の意欲が高まるにつれ、定員制限がクラブ再開の支障になると考えられています。そのため、利用していないスペースの活用やタイムテーブルの見直し、バーチャルグループフィットネスの検討をすることで定員を増やし、早いクラブ回復を目指すことを勧めています。

    仲間とともに楽しめるグループフィットネスを求めているクラブ会員が多いため、グループフィットネスが最も早く再開前の状態に戻ると言われています。Leisure-netの『Post Lockdown Recovery Report(ロックダウン後の回復レポート)』でわかったのは、クラブ会員や顧客がクラブに通えなかったことで寂しく感じたことは、クラブのスタッフとのつながり(コミュニケーション)でした。会員の45.8%が「クラブやインストラクターから得るモチベーションがない」、11.1%が「スポーツや水泳コーチからの指導が受けられない」をクラブに行けないことで寂しいと感じていることとして回答しています。その他には、「おしゃべり(33.3%)」と「競技スポーツ(12.8%)」が挙げられています。

    6. ミレニアル世代とZ世代が「鍵」

    2019年のレスミルズ・グローバル・コンシューマー・フィットネス調査で世界のクラブ会員のうち80%が 「アクティブ世代」として知られるミレニアル世代とZ世代が占めていることから、今クラブはこの世代をターゲットとしています。過去10年間のバジェットクラブとブティッククラブの成長の大部分は、ミレニアル世代とZ世代を上手く取り込んだクラブが牽引してきました。最新のレポートにおいて、コロナ後も同じ傾向が続くであろうと言及されています。

    ClubIntelの調査によると、そのミレニアル世代とZ世代は、X世代や団塊世代よりもクラブに戻ることをためらっているとのことです。コロナ後にクラブに通いたい人の比率を見ると、ミレニアル世代が61%だったのに対し、団塊世代では74%となっています。

    驚くべきことに、ミレニアル世代とZ世代(それぞれジム利用者の38%と43%を占める)は、ロックダウン中に退会した可能性が最も高い層なのです。また、ロックダウン解除後に現在のクラブを退会し、新しいクラブに入会する可能性が高いと答えたクラブ会員全体の21%のうち、ミレニアル世代とZ世代が占める割合が多く、彼らの支持を得るためにクラブかなり努力し続ける必要があることがわかります。

    「重要視している18~39歳の顧客層を失うという大きなリスクが指摘されています」とフィリップ・ミルズ氏は言います。「クラブ離れの原因となっているのは、感染症への恐れ、そして経済面の不安も大きいでしょう。その中でも彼らに残ってもらうためには、それ相応の価値を感じてもらうようにしなければなりません。過去5回も訪れた経済危機の時のように、今回もこの危機を乗り越えられると私は信じています。」

    7. デジタルサービスが成長を支える

    既存クラブ会員にとって「ソーシャルフィットネス」はとても人気があることが調査で分かっています。新型コロナウイルスの不安が軽減されると、クラブがオンラインサービスを通じて獲得したフィットネスファンの多くは、ライブ(対面)体験を求めてクラブに通い、クラブの成長を後押しすると考えられています。

    ClubIntelのレポートは、「ミレニアル世代とZ世代を惹きつけるためには、ロックダウン中に最もこの世代の利用が多かったオンラインでのコンテンツ提供に取り組む必要がある」と結論付けています。また、この世代にとって、オンラインフィットネスコンテンツの提供がクラブへの再入会検討を左右すると言われています。

    Leisure-netのレポートにも同様に、オンラインフィットネスの重要性の記載があり、イギリスのクラブ会員へのアンケートで「会員サービスの一環としてオンラインクラスの提供があったら、そのクラブに再入会しますか?」という問いに対し、「そう思う」と答えた人は18.9%、「多分そう思う」は49.3%、「まったくそう思わない」は31.9%でした。約70%が肯定的な反応だったため、クラブにとってデジタル投資は有益で、今後もコロナ後のクラブビジネスにとってクラブ会員とつながる必須なツールになることは間違いありません。

    8. 挑戦者のマインドを持つ者に訪れるチャンス

    すべてのレポートにおいて述べられていたのは、「withコロナ」時代においてチャンスを最大限に活かすためには、対応の早さが重要であるということでした。ロックダウン解除後、クラブが以前の状態に戻ることを待つだけのクラブは、かつてやり方では成功はないことに気づくでしょう。アクションの早いクラブはデジタルに投資し、クラブ会員と常にオンラインでつながり、またネット上の誰でもクラブ会員になり得るという柔軟な考えを持つことでしょう。最終的に業界で勝ち残るのは、オンラインとオフラインの両立とその戦略を確立させ、それぞれの利点を活用しながら、新たな課題に迅速に対応できるクラブとなります。

    「新型コロナウイルス感染症により一時閉鎖を余儀なくされたフィットネス施設は、ビジネスの取り組み方を見直しました。その中には、クラブ会員が自宅で視聴できるオンラインフィットネスコンテンツの提供などがあります」と、ClubIntelの共同設立者であるStephen Tharrett氏とMark Williamson氏はレポートの中で述べています。

    「新しい時代の幕開けを物語るのは、クラブの閉鎖ではありません。それは「withコロナ」時代においてどのようにクラブがこの危機を乗り越えていくかなのです。

    フィットネス業界の新時代は、クラブ経営者が現行のビジネスモデルと提供サービスを再考できるか否かにかかっています。」