このストーリーは困難を乗り越えた話でも、トラウマが残る出来事から立ち直った話でもありません。このストーリーは、様々な感情や脆い自分を、弱点ではなく強さとして利用し、昔の自分の影から抜け出すことをフィットネスが助けてくれたという話です。
それは2008年のこと。1分前までは健康体で運動が好きな21歳の女の子。そのころエクアドルで留学をしていて、友達とドライブをしていました。その数分後、ガラスの破片の中であおむけに横たわっていて、知らない人のズボンを手で握っていました。歩道まで私を吹き飛ばした車が爆発するのではないか、なぜ脚を動かすことができないのか、とぼんやり考えていました。
友達がどこにいるのか、生きているのか、なぜ自分は車の外にいるのかもわかりません。腰から下が不随になってしまったのだと思いました。頭の整理がつかなかったんです。泣きも叫びもせず、ただショック状態のまま、ズボンを握っていました。できることは目の前にある光を見つめるだけ。痛みも恐怖も、何も感じません。時間が止まっていました。
この事故について話をすると、だいたい2つの質問をされます。「どんな怪我をしたの?」そして、「治るまでどれくらいかかった?」答えは複雑です。私は、エクアドルで10日間病院し、アメリカへ療養のために戻り、歩行のリハビリをして、9か月後にはハーフマラソンを完走した、と答えることがほとんどです。骨盤の4か所の骨折がくっついたら、医者と保険会社は「完治した」と判断をしました。このストーリーはハッピーエンディング。怪我をしていたけど、完治しました。
しかし右脚の後ろは数ヶ月間針だらけだったし、10年経った今もつま先の指の一本は坐骨神経損傷によって、感覚がありません。右の殿筋は左の殿筋よりも筋力が弱いです。車は確かに今でも怖いですが、むしろ他のものに恐怖を感じています。飛行機からスカイダイビングをしていた友達は遊園地の乗り物に乗れなくなってしまいました。特にティーカップが怖いそうです。私は何が起こるかわからない大きなイベントがあると不安を感じ、ドキドキし、圧倒されてしまいます。その事故では全員が助かりましたが、それまでの人生に戻ることはもうできません。
トラウマという言葉は、ギリシャ語で「傷」、特に体にあるものを意味します。現代では無力感やコントロールの喪失感を生み出すような大きな出来事を指しています。トラウマというのはその出来事よりも、余波や影響に関係します。その出来事が自分から何かを奪い、日常生活が変わってしまうこと。事故は私の動く自由、力強く、自立した、運動が好きな若者、というアイデンティティーを奪いました。私は突然、ベッドで生活する98歳の能力しかなくなり、入浴、食事、トイレなど自分ですることができなくなりました。屈辱的な経験です。
トラウマという言葉は、ギリシャ語で「傷」、特に体にあるものを意味します。現代では無力感やコントロールの喪失感を生み出すような大きな出来事を指しています。
生活のコントロールを失うと、生存能力が働き、なるべく早く普通の生活に戻ろうとします。恐怖感を感じないようにするのです。誰も私に、完全に元の自分に戻れる、力を取り戻せる、とは言えませんでした。私は自分を失うことを恐れ、事故が自分の存在の一部にならないようにしようと決めました。大きな感情を抑え、行動に移します。何時間も森を歩けるようになるまで少しずつ歩く練習を開始。まとまりのない足は速く進み、そのうち労働させられている馬のようになっていました。9か月後、ついにハーフマラソンに出場しましたが、馬鹿げたアイデアだったように思います。でも、それは私なりの「自分は壊れていない。壊れない。」ということを証明だったのです。
しかしリハビリを通して、サッカー、ランニング、スキー以外の楽しさを発見することができました。嫌々ですが、Zumba、Barre、ピラティスなども試しました。何にせよ、動けることが嬉しかったのです。そして、ある時BODYJAMを紹介してもらいました。私はロボットのような動きしかできない下手なダンサーですが、毎クラス、大きな喜びを感じていました。そのうちに、BODYJAMを紹介してくれたインストラクターがレズミルズの認定をとることを勧めてくれて、そこで私の人生が変わりました。私はCXWORXを選び、クラスに一度も参加したことがないままトレーニングを受講します。CXWORXは私が必要としていたものの全てでした。身体的には、プログラムにある素晴らしい動きのおかげで、骨折していた腰が治りました。私は壊れていたのではなく、今までと違う方法でトレーニングする必要があっただけだったのです!また、レズミルズコミュニティにいる気遣いをしてくれ、情熱を持った人々にもとても惹かれました。自分のトライブだけでなく、新しい人生を見つけ、とても気に入りました。
5年が経ち、現在は7つのレズミルズプログラムを教え、チームUSAでBODYATTACKとBODYPUMPのトレーナーをしています。またアメリカスポーツ医学会とNASMと認定パーソナルトレーナー、ACEのフィットネス栄養学を専門にした認定ヘルスコーチでもあります。フィットネスの他には、スポーツを使い若者の成長を応援する素晴らしい非営利団体とも数多く関わってきました。ボストンの地元企業と協力し、フィットネスに触れることのできない低所得家庭の子どもたちや家庭内暴力を受けてきた子どもたちがフィットネスリーダーになれるようなチャンスを与える活動をReebokとともに指揮しています。
あの事故は実は最高の出来事だったと思います。短い期間で考えると、自尊心を奪われ、体が壊れ、無力で、弱い気持ちになりました。でも長い目で見たら、フィットネスを通して人々が健康と幸せを見つけるサポートをするという人生の目的を見つけるきっかけになったんです。ちなみに夫に出会ったのも、この事故がきっかけですが、その話はまたの機会に!
自分の力で立ち上がって、数歩歩きたいと願っていた時のことを覚えています。その当時は、今自分が持っている自由のためになんだってしていたでしょう。私は限界まで追い込み、恐ろしいけど新しい場所まで連れていってくれるLES MILLS GRITとLES MILLS SPRINTが大好きです。LES MILLS SPRINTの途中に感情で胸がいっぱいになった経験をしたことがありますか?私は毎回その経験をします。それだけエクササイズは自分を感動させてくれるものなんです。エクササイズはチャンスが与えられて、できること。エクササイズは自分を楽しく表現するもの。エクササイズは自由。私たちには一つの体と一度の人生しか与えられていません。そして私は毎日、人々が動くことの自由を楽しむサポートをさせてもらっています。
ストーリーの締めくくりとして、人生というのは複数のチャプターがつまった長い人生であり、トラウマは始まりや終わりではなく、ターニングポイントであるということに気付かされました。毎朝、新しいチャプターを書くチャンス、力強くなるチャンスをもらいます。私は不安感を持っているおかげで、インストラクターという仕事が上手くできています。不安感があるにも関わらず、仕事が上手くできているわけではありません。不安感は自分を前に進ませるエンジンになり、明るい性格のもとにもなっています。怪我のおかげで体を気に掛けるようにもなりました。
また、この体験のおかげで様々なことに共感ができます。インストラクターとしての私の最大の課題は自分とメンバーにコネクションをすることでした。コネクションには、長年隠し続けてきた大きくて怖い感情を使う必要があるからです。事故の影響で、身体だけでなく、感情も壊れてしまったように感じていました。でもレズミルズアドバンストレーニングとトライブからの素晴らしいサポートのおかげで、不安、恐怖を持った自分の全てを大切にすることができるようになりました。コネクションはもう課題ではありません。今ではクラスの中で一番達成感を感じられる部分です。
私の魔法の言葉は「輝く」です。そうして嘘のない本当の自分の姿で輝くことを思い出します。自分の中から生まれる輝きは、他の人に安心を与えることができます。
トラウマは自分が考えるよりも多くの人に影響を及ぼします。グローバルのトライブを拡大させるために、カロリー、体重減少にフォーカスするよりも、精神の健康のためのフィットネスについて考えましょう。トラウマになる体験をした多くの人は、「完治」すること、壊れたところを「直す」ことへのプレッシャーを感じます。でも実際、トラウマは自分自身の一部になるんです。体験を否定するのではなく、個性として自分全てを大切にすることができるようになれば、より健康的な世界を作る可能性は無限大になります。一緒に、輝きましょう。
ブルック・ローゼンバウアーはLes Mills USのBODYATTACK、BODYPUMPナショナルトレーナー、プレゼンターです。ブルックはボストンに拠点を置いており、Reebokが企画するコミュニティインパクトプロジェクトでシニアマネージャーを務めています。