今年もあとひと月。2022年を振り返って

今年はLMQ(レズミルズクオリフィケーションズ)のスタートや最近では記憶に新しいLONDONフィルミングなど、LES MILLSにとって大きな取り組みがありました。 それらについて日本での進捗や結果などについて東井ヘッドトレーナーへお話を伺いました。

Q:まず、今年7月にローンチされたLMQについてお伺いします。

LMQはLES MILLSインストラクターが教えるために重要な5キーエレメントそれぞれについてグレード評価を行い、その組み合わせでレベルを付与するというものですが、導入に際してチャレンジだったことは何ですか?

東井:アセッサー(評価者)の目線合わせですね。評価を受け取るインストラクターのために、誰が評価をしても同じ結果でなければいけません。

今までのアセスメントは本認定ではコリオグラフィー、テクニック、コーチングの3つのエレメントのみを合格基準に達しているか否かで評価していましたが、LMQではコリオグラフィーはグレード1~2、その他のエレメントはグレード1~3で評価をします。また、コネクションとパフォーマンスについても新たにグレード評価項目に加わりました。これらは私たちにとって新しいチャレンジでしたね。

もちろん、「スキルと基準」という評価基準はとても明確ですし、落とし込みの研修では評価をする際の心構えなどもしっかりと学びましたが、やはりアセッサーそれぞれ、こだわりのエレメントがあったり、合格レベル以上のスキルについて、各々の物差しのようなものもあったため、最初の練習では1つのビデオに対して評価はバラバラでした。そこからそれぞれのバイアスを捨て、「スキルと基準」に忠実に評価することを心掛け、様々な習熟度のビデオを毎週数本見てはプログラムチームごとにオンライン上で集まり意見交換をし、目線合わせを行うという作業を2~3か月行いました。私もBODYCOMBATチームとして参加しましたが非常にヘビーでしたね。

その甲斐あって、アセッサーが同じ目線で評価が出来るようになりました。

Q:そのように時間をかけスタートしたLMQですが、現在ビデオの提出状況などはどうでしょうか。

東井:LMQは初期トレーニングと本認定でも採用されているため、本認定のビデオはもちろんたくさん届いていますが、既に本認定を取得されているインストラクターからの提出は少ないですね。

提出はしたいけれどコロナ対策下でスタジオでの撮影に苦労されていたり、そうでない方でも納得のいくビデオがなかなか撮れないということもお聞きしていますが、既に経験を積んできた中で再度評価を受けたいというニーズをお持ちでない方もいらっしゃるようです。

Q:東井さんも長年インストラクターをしている一人ですが、キャリアを積んだ中で評価を受けるという経験はいかがでしたか?

東井:確かに、20年以上やってきた今、グレードやレベルという点数ともいえる形で評価を受けることに怖さはありましたよ。私も期日までビデオを何度も撮りましたし(笑)悪い結果をもらいたくないという気持ちはどうしても出てしまいますよね。

実際は私にとって付与されたグレードやレベルよりもコメントに価値がありました。キーエレメントごとに「強み」や「良かったところ」を具体的に書いてくれているし、ここからどう伸ばしていきたいかを問いかけるコメントや、「伸びしろ」を示してくれるコメントなど、ここまで長く教えてきて、どうすれば更に成長できるかという道筋がクリアになりました。

私の話からは逸れますが、興味深いこともあって。

LMQをローンチする前に、Les Mills JapanのトレーナーがLMQの評価を受けたんですけど、その中でも高いグレード、レベルを獲得した人に対しては「なるほどな」という感じでした。なんとも言えない魅力的なクラスをすると感じる人はLES MILLSが定めた「スキルと基準」に当てはめた時、やはり高いグレードがついたんです。要は、5キーエレメントのどれかに対する習熟度が高いということです。ご存知の方も多いと思いますが、谷顕真トレーナーはLES MILLS GRITでレベル10を獲得しました。これは全てのエレメントで最高グレードだということで、彼のクラスを素晴らしいという人が多いのはそういうことだ、というのがわかりますよね。

また、複数プログラムの評価を受けたトレーナーもいましたが、プログラムによってキーエレメントごとのグレード、レベルで違いが出るのも興味深かったですね。

クラブで人気のあるインストラクターのクラスに参加されるメンバーは5キーエレメントのことは知らずにそのインストラクターの何かに魅力を感じて毎週参加されています。きっとそのインストラクターがLMQの評価を受ければ、5キーエレメントのうちのどれかが優れているはずで、それがそのインストラクターの強みであり、メンバーを引き付ける理由なんです。

LMQでは自分の強みを知ることができます。一体自分のクラスの売りはなんなのか、ということですね。

これがわかれば、強みを前面に出すクラスをするのか、他のエレメントを向上させることに注力するのか、など自身の成長プランを立てることができます。私の個人的なオススメは前者ですね。それが自然と他のエレメントの成長につながるからです。もちろん、自分の「強み」をどのように他のエレメントの向上に影響させることができるかは考える必要はありますが。例えば、コーチングレイヤー2が苦手でコネクションが得意なインストラクターなら、参加者をよく見ているわけですから、何を伝えることが必要なのかがわかるはずです。それを伝えるのがレイヤー2ですから。

Q:LMQは今後どのように活用されていきますか?

東井:そうですね、今でもLes Mills ConnectでインストラクターのLMQレベルを表示させることが出来ますが、クラブマネージャーの皆さんにLMQのことをより知っていただければ、もっとクラスを教えるチャンスが広がるかもしれません。

Les Mills Japanでも今後何かの企画を行う時に活用することができるかもしれません。今の時点では未定ですが、色んな可能性を秘めていると思います。

それとは関係なく、自分の「強み」や「伸びしろ」を純粋に知ることはなんだか自分のクラススキルの成長の道筋が見えるような気持ちになります。日々懸命にクラスを行ってくださっている皆さんが同じような気持ちになってくれると嬉しいです。

LMQはタッチポイントをクリアしていれば、翌年に認定をお持ちのプログラムごとに1回無料で受けることができます。また、今年も無料なので、年内残りわずかですが1回提出してみて、来年また変化を見るなど、うまくこの制度を使っていただきたいですね。

Q:さて、ロンドンフィルミングについてもお伺いしたいと思います。久しぶりの大きなLIVEの熱気はいかがでしたか?

東井:素晴らしかったです。あの空間はLIVEならではのものですね。生でその場で感じる空気、見る風景、最近ではオンラインでも素晴らしい経験ができますが、フィルターなしで自分自身の五感で感じることに勝るものはないですね。その空間を全員で作り上げていることが感じられるのも素晴らしい点です。

クラスを行うプレゼンターの素晴らしさはもちろんですが、より彼らを輝かせるための舞台や照明、カメラ、衣装、参加者の経験をより良いものにするために会場入口の受付や、クラスを待つスペースの盛り上げ、BODYPUMPなどで使うツールの準備と片付けを行う大勢のスタッフ、そして、クラスを目一杯楽しむ参加者。

そこにいる全ての人が、イベントの成功という1つの目的のためにそれぞれの役割を全うしている姿やプロセスは人々がコロナを経て求めている「つながり」や「コミュニティ」そのものでした。そして、あの空間では誰もがお互いをリスペクトし認め合い、ポジティブなエネルギーが溢れていて、Les Millsってこういうことだよなってしみじみ思いましたね。

Q:今回のフィルミングでは世界中から250名近いプレゼンターが参加されたようですが、フィルミングに参加できることはプレゼンターにとってどのようなものなのでしょうか。

東井:とても名誉なことです。Les Millsのマスタークラス映像は世界一クオリティの高いものです。私たちはその映像でニューリリースを学びます。インストラクターの中には、このフィルミングにいつか出たいと思っている方も多いと思います。

実際、本番前に舞台裏で感極まって涙を浮かべている海外のプレゼンターを何人も見ました。この経験はきっと彼らの人生の中でも大きな出来事の1つとなるでしょう。

Q:日本からは8名のプレゼンターが参加しましたが、東井さんから見ていかがでしたか?

また、他の国のプレゼンターを見てどんな印象を受けましたか?

東井:とても誇らしかったです。彼らがフィルミングに参加することが決まったのは6月の終わりだったのですが、そこから本当にたくさんの準備を積み重ねているのを見ていましたので、現地でのリハーサルや本番での姿を見て感動しましたね。同じプログラムのチームメイトとも良いコミュニケーションをとっていたし、本番は本当に堂々としていて心から楽しんでいて、度胸があるなと率直に思いました。

同時に彼らが旅立つまでにとてもたくさんの方が協力をしてくれたので、その方々へ感謝の気持ちでいっぱいでした。

日本はフィルミングに参加したプレゼンターだけがということではなく、全体的にテクニックのレベルが高いと感じました。日本は他の国より、インストラクターにとってテクニックが他のエレメントよりも優先順位が高いのかもしれません。これは日本の強みとも言えます。

伸びしろとしては「表現」という部分でしょうか。日本のプレゼンターの1人が海外のプレゼンターに英語のキューの発音チェックのために練習に付き合ってもらった時があって、そのコーチングの中に日本語も入れていたんです。そうしたら、そのプレゼンターが「この日本語はどういう感情なの?」と質問したんです。

要は彼らの中では音楽や言っている言葉にあった表情や声、アクションの優先順位が高いということです。

確かにテクニックはあるレベルを超えれば、飛び抜けてでもない限り参加者にとって優劣を判定する材料にはなりにくいですよね。また飛び抜けていたら、それは1つのパフォーマンス、表現になります。やはり表現という部分は人の心を揺さぶる重要な要素で、私たちの「伸びしろ」です。現に何よりもステージの上で本当に楽しんでいるプレゼンターの表情が参加者を同じように楽しい気持ちにさせていたのですから。

Q:今回のプレゼンターの選考基準などはどのようなものだったのでしょうか。

東井:前提としてフィルミングのプレゼンター選考基準はその時によって異なりますので、これからお話することは必ずしも今後の参考になるとは限らないという理解で聞いてください。

今回はコロナの期間を経て再び大きなLIVEを行えることのセレブレーションを兼ねたフィルミングだったため、世界中から250名近いプレゼンターが集結し、日本からは8名ものプレゼンターが参加することができました。

今回に限っては、各プレゼンターの出演プログラムを決定するためにグローバルから指定された条件は、ロンドンでフィルミングされるプログラムのうち3つ以上を指導できるということでした。

その中から日本のメンバーを選定する要素として、LMQのレベルを取り入れました。

Q:今後、フィルミングに関わらず何かスポットライトを浴びるようなチャンスを掴みたいインストラクターは日々どのようなことを心がければいいでしょうか?

東井:例えば、今回日本のプレゼンターたちは英語でのコーチングをとても頑張って準備しました。彼らは帰国後引き続き英語の勉強をすると言っています。フィルミングでリードを取りたいなら、来月呼ばれても出来る準備をしておくに越したことはありません。不明確なものへの努力は難しいですし、例えチャンスが来なかったとしてもです。

過去にこんな例がありました。あるインストラクターがトレーナーのオーディションを受けた際、本命のプログラムでは採用されなかったけれど、そのインストラクターが持つ個性の魅力や可能性が評価され、そのインストラクターが持っている他のプログラムで採用されたという事例です。

そのインストラクターは複数のプログラムライセンスを持っていることでトレーナーへのチャンスを掴むことが出来たのです。今ではそのプログラムを一番愛していますよ。

新しいクラブでレッスンインストラクターとして自身を売り込みたい方ならLMQのレベルや複数のプログラムライセンスを持っていることが強みになるかもしれません。

掴みたいチャンスの種類は人それぞれで、それによって違うと思いますが、そのチャンスがやってきた時に既に準備が出来ているかどうかが差を生むことになるのではないでしょうか。

また、LIVEでのフィルミングを久しぶりに見て感じましたが、華やかな舞台ではありますが、そこでプレゼンター達がやっていることは私たちが日ごろクラブメンバーに向けてやっていることと何一つ変わらないということです。

なので、何よりも大切なのは、日々のクラスで目の前のメンバーと毎回素晴らしい体験を共有することに全力を注ぐことです。皆さんは既に今いる場所でスターインストラクターになっている、またはなることができるんです。

私の知る限りステージに立つ素晴らしいプレゼンターたちは日常のクラスを一番大切にしています。

ロンドンフィルミングの日本プレゼンターの体験などは、今後皆さんへお届けしますので、そちらもお楽しみにしてくださいね!

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