国際女性デー:フィットネス業界における偏見を取り払う

3名の女性がインストラクターとしてどのようにバイアス(偏見)に向き合っているかを教えてくれました。#BreakTheBias

グレース・アン・トーマス(米国)

私は昔からアクティブな人でした。子供の頃は大半の時間を外で走り回ったり、プールで遊んで過ごしていました。他には野球をしたり、ボウリングチームに所属したり、サマーキャンプでは35度の暑さの中で鬼ごっこをしたりしていました。そして私は太ってもいたのです。当時はメディアではもちろん、誰に聞いても「太っている=ダメな人間」とレッテルを貼られました。

太っていることで自己否定が強かったのですが、この考えは、「太っていることは恥じるべきこと」だと散々言われてきたことが原因だと年を重ねるごとに気づくようになりました。世間は私のような人はもっと痩せるべきだと考えていたので、私は長い間自分は痩せなければいけないのだと感じていました。

なので、私はそうしてきました。ダイエットやランニングも頑張りました。ハーフマラソンを9回、トライアスロンを2回、5キロ走なんて数えられないくらい沢山やりました。体重も45キロ落ちてスリムになりましたが、唯一変わらなかったのは、自己否定感でした。周りの人は痩せて綺麗になったねとほめてくれましたが、それは私にとって以前は綺麗じゃなかったということを言われているかのように捉えてしまいました。リバウントしたときには自分がどれほど「醜い」姿をしているのか、そしてみんなの失望した顔を想像してしまいました。なぜ女性は「こうでなければならない」という狭い美の基準を守るようしつこく言われるのでしょうか?そして、洋服のサイズが9号ではない人が輝きと自信を持つことは、なぜ無理だと思われてしまうのでしょうか?

ジムにいる太っている人を見ると、多くの人は「きっと痩せるためにきているんだろう」と推測します。それ以外の理由があるだろうか?太っている人は怠け者で、身体を動かすことが楽しいと思うわけがない。そんな風に思ってしまうでしょう。

2013年のある日、私はBODYJAM™のクラスに参加しました。私は自分が踊れなかったことに悔しさを感じましたがもっとうまくなりたいと思いました。周りに見られたくなかったので、部屋の隅で自分の足に躓きながらも、踊ることに楽しさを感じるようになりました。完全にとりこになったのです。回数を重ねるごとに、BODYJAMが想像もしなかったほど私に自信を与えてくれていることに気付きました。私は徐々にクラスの前の方で参加するようになりました。また当時受けていたレズミルズのどのクラスでも同じことが起こりました。RPM™、BODYPUMP™、BODYATTACK™のクラスで後ろに隠れて緊張していた私が、もっと前に出たいと思うようになりました。

ジムにいる太っている人を見ると、多くの人は「きっと痩せるためにきているんだろう」と推測します。それ以外の理由があるだろうか?太っている人は怠け者で、身体を動かすことを楽しいと思うわけがない。そんな風に思ってしまうでしょう。私は長年、この偏見に直面してきました。ダイエット文化と決別した私にとって、ワークアウトは面倒なことや食べ過ぎた時の罰ゲームではなく、純粋に楽しむものになりました。「自分がやりたいから、好きだから」という理由でクラスに参加しました。また、体格の大きい私が周囲と同じようにBODYATTACKを出来るということを証明できたことにも密かに喜びも感じていました。この感覚をどんどん求める自分がいました。どんな人でも、やろうと思えば何でもできるということを証明したかったのです。

もし私が太っている女性に対する偏見を変えることができる人間だとしたら?普段クラスに来ないような人たちに、「ちょっとやってみようかな」と思わせることができたら? 私はそんな人たちのきっかけになりたいと思います。

私がインストラクターになったらどうだろう?私にそんなことができるのか?私のことを認めてくれる人や、私のような外見の人と一緒にBODYPUMPを受けたいと思う人はいるだろうか?

今でも悩みます。フィットネスの世界では体の大きい人(特に女性)に対する偏見があります。怠け者だとか、きっと動けない、とか「誰もそんな姿を見たくない 」という理由で居場所が無くなるなど、乗り越えなければならないことがたくさんあります。でも、もし私がそれを変えることができる人間だとしたら?普段クラスに来ないような人たちに、「ちょっとやってみようかな」と思わせることができたら? 私はそんな人たちのきっかけになりたいと思います。

私には、レズミルズインストラクターとして活躍する友達が数人います。私自身インストラクターになりたいと思い始めたとき、彼らは自分のことのように喜び、応援をしてくれました。その後押しもあり、私はBODYPUMP™のイニシャルモジュールトレーニングに申し込みました。

始めてクラスを教えた時は恐怖でいっぱいでした。太った私がクラブにいるだけでなく、クラスの先頭に立って他の人をリードして運動しているということに緊張しましたが、これほど自分を誇りに思ったことはありませんでした。反逆している気持ちでした。私は長い間、「痩せるまで、自分の存在を消さないといけない」と自分に言い続けてきましたが、ついにそれに立ち向かうことができたのは人生のターニングポイントでした。

インストラクターは「強く」「かっこよく」あるべきだという考えを持っている人はたくさんいると思います。初めてインストラクターとして勤めた施設でもそのように話す人たちの言葉を聞いて胸が痛みました。しかし同時にそれが私の心に火をつけ、皆が間違っていることを証明しようとしたきっかけにもなりました。

始めてクラスを教えた時は恐怖でいっぱいでした。太った私がクラブにいるだけでなく、クラスの先頭に立って他の人をリードして運動しているということに緊張しましたが、これほど自分を誇りに思ったことはありませんでした。反逆している気持ちでした。

私の夢は、フィットネスの世界を変えることです。私は、「強さ」や「身体がフィットしている 」というのは決まった形ではないことを証明したいと思います。私に似合う強さは他の人に似合う強さとは異なります。今こそ、人それぞれの「違い」を受け入れ、それを「強み」とみなすべきです。

私が業界全体の考えを変えることはできないかもしれない、きっとそこまではできないでしょう。でも、もし私が一人でも多くの人の見方を変えて、様々な体形や見た目の人がいて、どれも大事な要素だということを認めてもらうことができれば、それは大きな成功と言えるでしょう。

ムナ・アーダー(中東)

私の名前はムナ・アーダーです。私はヒジャブの女性で、ヨルダンに住んでいます。

イスラム教におけるヒジャブとは、手、顔、足以外のすべての部分を、長くてゆったりとした、透けない服で完全に覆うことを指します。ヒジャブを着用している女性をムハジャバと呼びます。イスラム教徒の女性は、結婚対象となりうるすべての男性の前ではヒジャブを着用することが求められますが、同時に女性はヒジャブを着用するかしないかを選ぶことができ、誰もそれを強制することはできません。私にはそれを着ないことを選んだ妹がいます。

私は昔からスポーツが大好きで、学生時代にランニングやバスケットボールをしていました。当初はクラブ会員としてレッスンに参加していましたが、BODYCOMBAT™に惚れ込み、インストラクターになりました。BODYPUMPとLES MILLS TONE™の認定も受けており、世界中のレズミルズのイベントに参加して、多くのトレーナーやプレゼンターに会うことができました。

フィットネスはみんなのもの。走ったり跳んだりするのに男である必要はありません。白人でなくても、サイクルのインストラクターになれる。痩せていなくても、体が引き締まっていなくても、クラスを楽しみ、カロリーを消費することができます!

最初はイベントで自分だけがヒジャブを着ていることに違和感がありました。アラブ諸国以外の国のインストラクターは、じっと見て「ヘッドカバーをつけてどうやって運動するの?長袖とヒジャブを着てスポーツできるの?パフォーマンスやテクニックに影響はあるの?」など聞かれたりもしました。最初はとても嫌な気持ちでしたが、最終的には「人と違うことはいいことだ」と気づきました。BODYCOMBAT 75のマスタークラス(アムステルダムで撮影)では、ヒジャブを被っていたからこそ自分の姿をすぐ確認することができました。すごいですよね!

本当に大切なのは人からどう思われるかではなく、私が自分自身を見て何を思うか、ということに気づきました。私はヒジャブの女性でもスポーツをすることができ、輝くことができるということを全世界に示すために旅を続け、レズミルズのイベントに参加することを決めました。時間の経過とともに、人々はヒジャブの女性を見ることに慣れてきました。例えば、ストックホルムのLes Mills Liveでは、10人以上のヒジャブの女性を見かけ、最高の気持ちでした。

フィットネスではどんな姿形であれ皆平等であることが重要です。「あなたは誰よりも優れていないし、誰もあなたより優れていない」というのは、ほとんどの人が忘れてしまう事実です。フィットネスはすべての人のためのものです。走ったり跳んだりするのに男である必要はありません。白人でなくても、インドア・サイクルのインストラクターになれる。痩せていなくても、体が引き締まっていなくても、クラスを楽しんでカロリーを消費することができます!

私にとって「偏見をなくす」ことは、「差別のない場所」という意味であり、その気持ちが折れることはありません。

プリヤ・マーティン(イギリス)

正直なところ、私は最初からフィットネス業界にいたわけではありません。私の本業は建築家です。最近では女性として差別を感じることはありませんが、キャリアのスタート時には、女性であることやマイノリティであることが昇進に不利になることがありました。建築業界にはまだ無意識的な偏見がありますが、私はそれに逆らうことを常に心がけてきました。

フィットネスへの道のりは、これまでとはまったく異なるものでした。

遺伝性の病気(糖尿病や心臓病)を予防するために、健康的な体作りを目指して格闘技を始め、ムエタイでは3級を取得しました。私は、そのようなエクササイズから感じる力強さや勇敢な気持ちになることで得られる刺激とアドレナリンが大好きです。そのため、パンデミックになったときに、思い切ってレズミルズの3つのプログラム(BODYCOMBAT、BODYPUMP、SH'BAM™)の資格を取得しました。

私が民族的マイノリティの女性であることは、フィットネス業界で障害にはなりませんでした。私の住むケント州では、定期的なレッスンを実施したり、代行を担当することが容易にできました。逆に、私と同じ境遇の女性から偏見の声がありました。彼女たちは、自分達は目立つべきではないと考えていたので、私のことを良く思いませんでした。

私がマイノリティの女性であることは、フィットネス業界で障害にはなりませんでした。

私の地元のクラブでは、より多くの民族的マイノリティの女性がクラスに参加し、私のような人がクラスを教えていることを新鮮だと言ってくれるので、とてもやりがいを感じています。年齢、人種、性別を問わず、さまざまな人が訪れ、私だけではなくお互いを歓迎する環境だからこそ、何度も足を運んでくれるのです。私のクラスでは、取り残されていると思って欲しくないので、常に皆がそれぞれ参加している感覚を作ることを常に心がけています。

以前から人前で話す経験の場は沢山あったおかげで、私は初対面の人とも難なく話せました。私は10年もの間、多くの会議やレクチャー、イベントで講演してきました。時には300~400もの人々の前でメンタルヘルスや多様性について演説してきました。興味深いことに、身近な南アジアのコミュニティでは、私のような女性がメンタルヘルスについて語ることはタブーであるかのように眉をひそめられることがありました。私がBODYCOMBATを教えていることを知っている人は、「男性的すぎる」といって、さらに私を非難しました。レ図ミルズのインストラクターになったことで、自分でも知らなかった側面やさらなる広がりが生まれました。

レズミルズのインストラクターになったことで、自分でも知らなかった側面やさらなる広がりが生まれました。

私のようなレズミルズインストラクターを他に知りませんが、それで不安になることはありません。クラスは常に満員ですし、スタジオでは多様性が尊重されており、質問されることもなく、レッテルを貼られることもなく、判断されることもありません。だからこそ、私にとって最大の達成感は、自分のクラスに戻ってきてくれる人たちを見た時です。私は先駆者であり、自分が型にはまらないことを受け入れてきました。私はただ自分の仕事をしているだけですが、お客さまが求めている体験を提供するためにさらに上手になりたいと思っています。

フィットネスはすべての人に影響を与えます。私たちはインストラクターとして、柔軟な考えをもって人と接する義務があります。参加者と話をして、彼らの個々のモチベーションに純粋に興味を示すことで、彼らが成長し、潜在能力を発揮するための安全な空間を作ることができることに気づきました。インストラクターは手本となります。私は自分が有色人種の女性であることを誇りに思っていますが、それ以上に良い心を持つことを大切にしています。私はあきらめず挑戦してきました。その時点で私は勝者です。そして私のクラスの参加者全員もそうです。これが、私にとってバイアスをなくすことに繋がります。