更年期への備え:卵巣を持つ人へのアドバイス

多くの女性が中年期に直面するホルモンの乱れについて議論に上ることはほとんどありませんが、ニキ・ベザント氏はこれを変える必要があると考えています。『This Changes Everything: The Honest Guide to Menopause and Perimenopause(すべてが変わる:閉経と更年期に関する率直なガイド)』の著者であるベザント氏は、運動によってホルモンの変化に伴う症状を和らげる方法など、あらゆる年代の女性に役立つアドバイスを与えてくれます。

エマ・ホーガン(以下、EH):あなたは更年期障害について膨大な量の研究を行い、何百人もの女性に話を聞いてきました。更年期障害との付き合い方について伝えたいことは何ですか?

ニキ・ベザント(NB):「まず第一に、これは欠陥や病気ではありませんし、怖いものでもタブーでもないということ。更年期や閉経は、卵巣のある人(または卵巣を持ったことのある人)なら誰でも経験する、正常で自然なプロセスです。そしてそれは永遠に続く訳でもなく、乗り越えられるものです。多くの女性が、このような経験は自分だけだと孤立感を抱き、黙って苦しむ傾向があることがわかったのですが、これには驚きましたし、本当に悲しいことです。更年期の症状はみな違いますが、共通点も多く、共有することで他の人を助けることにもなります。」

EH: 運動することで更年期障害の経験がどう変わるのでしょうか?

NB:「更年期や閉経期の症状の多くに運動が有効なことは、研究の中で何度も出てきました。まず、運動は精神的な健康にも効きます。気分を高めてくれますし、中年期や更年期に起こりやすい不安や抑うつを軽減する効果があると研究で示されています。また、運動は睡眠を促す効果があり、睡眠はとても重要です。睡眠不足になると、この時期の女性にはよくあることですが、全てが悪い方向へ向かってしまいます。運動は火照りの症状を和らげるのに効果的で、活動的な女性ほど火照り感も少なく、重症化しないことが証明されています。」

EH: 運動は、筋肉量の管理にも役立ちますね。これがなぜ重要なのでしょうか?

NB: 「エストロゲンと筋肉の間には、ホルモン的に密接な関係があります。エストロゲンには、筋肉を保護し、丈夫に保つ働きがあります。女性は、エストロゲンが減少するにつれて、筋肉量が男性よりも速いスピードで減少していきます。この時期に筋力トレーニングを行い、年齢を重ねても持続することが本当に重要なのです。筋力トレーニングは筋肉量を維持するために必要で、良い効果がたくさんあります。骨や関節を保護し、脂肪のない体を維持し、体重を管理するのに役立ちます。」

EH: 更年期や閉経期を乗り切るために、筋力トレーニングのほかにどのような運動が有効でしょうか?

NB: 「色々混ぜて取り入れることが重要です。心拍数を上げる運動、筋力トレーニング、そしてリラックスできる運動も有効です。また、バランスと安定性を重視したトレーニングの習慣をつけるにも最適な時期です。バランスなどのトレーニングをしていないと、加齢とともに失われがちですからね。」

EH: 更年期の体重増加についてはいかがでしょうか…。

NB: 「更年期には少しは体重の増加や再配分が起きるものです。体重増加は必ずしも更年期が原因ではありませんが、体重の再分配(腹囲に脂肪がつくこと)は、ホルモンの変化によって起こります。ある程度は避けられませんが、できるだけ筋肉量を増やしておくことで抑えられます。」

EH: 「更年期」と検索すると、手っ取り早いダイエット法がたくさん出てきます。更年期にダイエットを始めようとする女性へのアドバイスをお願いします。

NB: 「更年期の女性をターゲットにしたダイエットはたくさんありますが、これには注意が必要だと思います。ダイエットすることが健康に良い場合もありますが、ダイエットはかなりのストレスになりますし、ストレスと更年期障害の症状悪化には関連がありますから、不必要なストレスは避けたいところです。

それよりも、更年期や閉経をきっかけに、年を取っても健康で生き生きとした生活を送るための良い健康習慣を身につけることをお勧めします。人生の残りは30〜50%ですから、その期間を気持ちよく過ごすためにも良い習慣を身につけることが大切です。

量よりも質の高い食事が大切です。分量に気を配り、健康的な野菜や植物を食べること。これは分かってはいても忘れがちなことです。(筋肉のために)良質なタンパク質をしっかり摂ることも大切です。大袈裟なシェイクやバーなどは必要ないですから、ともかくヘルシーでタンパク質の豊富な食品をたくさん食べましょう。また、食物繊維は、特に腸の健康のために、年を重ねた私たち女性にとって本当に大切です。食物繊維を摂るように心がけていると自然と植物もたくさん食べられるので、良いことずくめなのです。」

EH: 更年期の食事で避けた方が良いものは何ですか?

NB: 「この時期(というか、いつでもそうなのですが)、アルコールはあまり良くないでしょう。加齢に伴い、アルコールを代謝する能力が低下しており、エストロゲンの減少もこれに寄与していると考えられています。このため、アルコールの影響が強くなり、二日酔いもひどくなります(私自身がそうで、アルコールが合わないため現在はかなり飲酒を控えています)。また、アルコールは更年期障害の症状を悪化させます。睡眠にも悪く、火照り感も悪化し、精神衛生的にも良くありません。このことから、アルコール摂取量を減らすのは本当に良いことです。カフェインと糖分を減らすのも賢明です。そして、大幅な加工が加えられた食品を控えることは言うまでもありません。」

EH: 体を動かすのが良い治療法になるという研究結果があります。しかし、それだけが唯一の選択肢ではありません。著書の中で、HRT(ホルモン補充療法)はかつて考えられていたほど怖いものではないと指摘されていますね。

NB: 「運動は非常に有効ですが、それですべてが治るわけではありません。もし、ひどい症状に悩まされ、生活の質に支障をきたしているのであれば、専門家の助けを求めるべきでしょう。以前は、多くの医師がHRTは体に悪いからと処方に消極的でしたが、それは最新の情報に基づいた考え方ではありません。私が話を聞いた多くの女性たちが、HRTで人生が変わったと言います。特に、火照りや気分の落ち込み、外陰部や膣の不快感など、さまざまなことに対して本当に有用な治療法であることがわかっています。

自分の体の声に耳を傾けることがとても大切です。すべての問題が更年期障害や閉経に起因するわけではないので、何らかの変化を感じたときに、それを更年期障害のせいと決めつけないことです。おかしいと思ったら、まずは受診しましょう!」

EH: 20代、30代、40代の女性が更年期に備えるためにすべきことは?

NB:「これからの世代には、私と同じ経験をして欲しくないですね。私はX世代ですが、何もわからないまま更年期を迎えました。ミレニアル世代やそれより若い世代にとっては、今が更年期について学ぶチャンスです。知識は力であり、何が起こるかを知っていれば自信を持って対処できると私は心から信じています。

何歳であろうと、自分の健康を守るために行動を起こすことをお勧めします。私の印象では、更年期を迎えるにあたって、健康であればあるほど、多くの場合、より良く対処できるようです。よく食べ、よく運動し、ストレスをためず、よく眠り、飲み過ぎず、心の健康にも気を配っていれば、更年期で起きる課題もうまく乗り越えられるでしょう。」

EH: そして行動すべきなのは女性だけではないのですね。

NB: 「そう、女性だけの問題ではありません。誰もが更年期や閉経を理解する必要があります。フィットネス業界にも最新の知識を持った人が増えてほしいですね。中年女性が若い男性トレーナーに「私は更年期の女性なので、できることとできないことがあるのを分かってください」と心を開いて話すのは、簡単なことではないでしょう。私たちが活発に楽しく運動できるようにするためには、少し特別なケアや配慮、調整が必要かもしれないのです。ですから、年齢や性別に関係なく、人々がこのプロセスについて知識をもっていたら素晴らしいと思います。

ニキ・ベザントは数々の受賞歴のある作家、講演者、思想家、コメンテーターです。健康、ウェルネス、栄養を専門とし、複雑な科学を誰でも理解できるシンプルなメッセージとして伝えることで高い評価を得ています。